Million Notes

刀ミュ・歌・演劇の話をしまっておくところ

【後半】歌合 乱舞狂乱感想 -歌と刀とかみさまと-

季節はずれの歌合感想文、後半記事です。

前半記事→https://taka-koro.hatenablog.com/entry/2020/07/22/225001

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<目次>

芋(仮) 

 公式タイトルの無い小話。
内容は「おおくりからと おおきなおいも」。
この話の間だけ、空間がNHK教育テレビでしたよね…!?笑

 

巴形薙刀が畑の芋を抜こうとするが、慣れない仕事で(…)上手に抜けない。

通りかかった安定と陸奥守が手伝うけれど、やっぱり抜けない。
さらに通りかかった伽羅ちゃん、いつも通り慣れ合いを拒絶しようとするも、むっちゃんに「最近畑仕事に熱心じゃろ!大きく育ったがはおまんのおかげ!」と促され…
いやほんと4等身作画の5分アニメで見たいやつ!!笑

 

最初に『名もなき径』「さらさらと…さらさらと…」がのどかで可愛いアレンジで流れるのが、なんかもうむりです…。

https://utaten.com/lyric/mi18111004/

「行くべき場所もなく 彷徨い 漂い 溶け合うだけ…」

ってひんやり歌ってた巴さんの物語が、本丸でさらさら綴られて、枯れ落ち葉ならぬふかふかの豊かな土になって降り積もっていくよ(;;)

 

むっちゃんが伽羅ちゃんの作業に気づいてた件については、『懐かしき音』のパートで、一人黙々と畑仕事をしてる伽羅ちゃんをしっかり見てるお芝居が入ってたそうで…。
もうほんとミュ本丸のむっちゃん大好きです。
目端が利いて気が利いて、周りをさりげなく明るい方向に連れ出すのが上手くて、本丸に一人いてほしいむっちゃんすぎる。

 

「さつまいもだな。(エエ声)」
笑う。可愛い。なんでこんなにツボってるんだか分からないんですけど、「さつまいも」って言うだけでかっこいい伽羅ちゃんほんと何。かっこいい。

そしてホームグラウンドみほとせの民なので、こんなほのぼの話でも
?「うわあ、おらぁもこんな芋見たことねぇです!榊原さまはすげぇや!!」
みたいな幻聴で勝手にブワッ(´;ω;)ってなってしまう。

伽羅ちゃんが丁寧に育てた畑、きっと桑名くんが後でいっぱいいっぱい褒めてくれるよ……
「戦に勝つためには土と向き合うこと!」の台詞になんともいえない顔をしてほしい……。

 

 

物部の役割(仮) 

今回唯一の歴史人物パートでしたね。

何が何でも家康に鯛の天ぷらを食わせようとする時間遡行軍
 vs
歴史を守る物部としてその企みを阻止する信康・貞愛の暗闘!死闘!いやなんだこれ!!笑

 

年末フェスの好きなところに、義経公が「兄上!泰衡どのー!」ってにこにこしてたり、近藤さんと榎本さんが対面したり、歴史上の人物の境界も取っ払われるっていうのがあるので
(去年までの空間とは少し違うけど)なかよしドタバタ徳川ファミリーが見られたの超嬉しかったです。
弟たちの前でオニイチャンしてる信康さんも、信康さんの前でだけかしこまっていい子になる貞愛も大好きなんですよぉ…。

 

家康公の描かれ方の、
 戦嫌いで温かな人柄の青年期(みほとせ)
 →威厳に満ち、時に冷徹にも見える老年期(葵咲本紀)
って変化もあの連作の見所でしたが。
老年期バージョンのお姿で登場しても、根っこの部分は素直で子煩悩でちょっと剽軽な、あのみほとせ家康公だよ!って感じにほっこりしました*´`

あと秀康……帰って来てくれてありがとう秀康……!!
気軽に父上を酒に誘える関係よかったね…お祭り空間の魔法ありがとう…。

父上といえば、千秋楽で鯛落っことしちゃった家康公、多分軽いアクシデントだったと思うんですけど
貞「何やってんだよォ!!息子だぞ拾えよ!!#」
って最ッ高のアドリブ決めてきた永見=貰われっこ=貞愛、まじで”持ってる”神主ですね!?笑
(あの空気がアドリブじゃなくても逆に凄い)
鯛になったり牛になったりダンゴムシになったり、八面六臂の日替わり大活躍お疲れさまだ!!

 

ただでさえ『前進か死か』の入りが怒涛すぎて笑うのに、吹き矢で綺麗に倒れた秀康がムクッと起きて、秒でキレッキレの剣舞始めるのずるすぎる。
双子のために用意されただろう「俺がお前か お前が俺か」のハモり、音源に残ってよかった~~~~(;;)

一人センター通路を行く父上の背中、そして「だがいいか 忘れるな」の声もかっこよかったですね…!!権現様!!

2017祭では「はなせ吾兵~!わしはあの花を半蔵に見せたいのじゃあ~!!><」ってやんちゃな若様だった信康さんも、すっかり一家の屋台骨になられて…。

あの吹き矢は、某ハダカのおじさんに教わったんでしょうか…笑
徳川ファミリー愛しすぎる。ほんとまた会いたいです、来年も出てくれるといいなぁ…!!

 

美的風靡

(脚本:三浦 香)


ぬばたまの わがくろかみに ふりなずむ あめのつゆしも とればけにつつ
万葉集:私の黒髪に降った天の露霜も、手に取れば儚く消えてしまうのです 巻7 1116)


和泉守・蜂須賀・青江、それぞれに丈豊かで美しい髪を持つ男士たちによる、風呂上りのヘアケア談義。
青江の持つ椿油と、ここにいない「もう一人」の湯上り組の関係は…というお話。

もーーみほとせクラスタ、この歌合一回で何回撃ち抜かれればいいんですかね!?
葵咲本紀冒頭であれだけ隊のメンバーを恋しがってた村正に、青江から、そして本丸の仲間からこんな返歌があるとかさぁ…!
全滅寸前の激闘から帰還した村正達、めちゃくちゃ労われてほしい…。

にっかりさんの願掛けは、もう問答無用で優しい&いとしい。
それを聞いてすぐ「俺も貰っていいか」って応じてくれる、蜂須賀の素直さもすっごく良い。
そして声をかけたは良いけど照れくさくてそっぽ向いちゃう、でも「君も祈ってくれるのかい?」って水向けられると「おう!!」って力強く頷いてくれる兼さんも最高に兼さんだったー!!
あとごま油トリートメント事件に対する青江の「勇気を称えるよ。」がまじでミュ本丸の言語センスによるツッコミで、三浦先生のキャラ掴みすごいな!?って舌を巻きました(笑

 

小狐丸はどういう手入れをしてるんだろう?のくだりとかもね…。
長髪組としてちゃんとカウントされてるのが嬉しい
+ちょっとミステリアスな立場にいるのもミュ本丸の三条っぽくて良い
+でもそれを変に特別扱いにせず、「ま、謎の多い三条さんだしな!」ってサッパリ流してくれる兼さんが、ちゃんと仲間同士の距離感で最高。
2016乱舞祭とか、あのバケモノ爺さんたちに割と盛大に振り回されたのにね!
夢オチでノーカンかもしれないですけども!笑

ていうか蜂須賀の「肩の前に垂らした髪にオイルを揉みこむ」仕草、ロングヘア持ちの動作として精度高すぎませんでした???
あまりにも自然な、女子鏡前で見るやつだったよ…びっくりしたよ…。
しっかりと櫛で梳かす!って時の兼さんの仕草もすき…コシとボリュームある分、手入れにけっこう力要りそうですもんねあの御髪…。
青江が「ふぅ…。」って息つきながら髪拭うのといい、なんかこのパートよく分からない感じにリアリティがすごい。
ロングヘア纏めて手入れ始めるとき、リラックスと億劫さの微妙な狭間で、なんかなりますよね「ふぅ…。」!笑


あとなんといっても  軽  装  披  露  !!!!!!
ありがとうございましたーーー!!!!!

軽装が始まったとき「需要に敏感なミュ審神者P、一通り出揃ったらブロマイドとか出してくるんじゃ…?」とかTLで言ってましたけど、そんな手ぬるい話じゃありませんでしたね。
ホットな時期を逃さない上、最高のシチュエーションで調理されて白旗でした。まいりました。
しかも蜂須賀の軽装を、ゲームのアップデートに合わせて、大阪・東京の2都市のみのために作ってくれていたという…!!
この「削減しようと思えばできる追加コストをかけてでもファンがぶちあがるものを見せてくれる」スタイル、全員分の内番衣装くれた2016乱舞祭から変わってなくて、ほんと頭が上がりません。


『夕涼み 時つ風』も良い曲だった…。
会場を盛大にどよめかせた某助手さんにはツッコミません!!笑
「ぶっとび演出をクオリティで押し通してくるのずるい」って前半で2回も言ったから!!!

風が運ぶは 便りか祈りか
月が憂うは かの空か この空か

夜風がそよぐような優しいメロディに乗るこの歌詞、出だしから美しすぎる。
三人の声も良かった~~~…
兼さんの歌が、出だしからすっかりがっつり自信と詩情に溢れたセンターのお歌でいらっしゃる…。
蜂須賀の声の響きもこういうしっとり聴かせるバラードを奏でられるくらい豊かでジンときてしまったし、何より青江!
青江の高音がほんっとすき…!!


もうこれは、歌だいすき&ミュ本丸だいすきおばけの妄言だと思って頂きたいんですが…。
ある意味、今回の『歌合』の通奏低音のようなテーマを体現してくれたのが、篝火講談→美的風靡の青江だと思ったんです。
刀である青江は、「きみに触れられたとしても斬ることしかできない、”交わる”というのがどんな感覚か知ることはない」と語ってた。
でも刀剣男士となった彼は実のところ、誰かと交わる手段をちゃんと持ってるんですよ。歌のことだよ。

祈りを託した言葉は旋律に乗って、隣の誰かの声と絡んで溶け合い、交じり合う。
気持ちを許して、委ねて、心を重ねていく。
そういう心地よさとか、ちょっと切ない温かさを体現してくれるような柔らかいハーモニーがもう、心のやわらかいとこに直撃しました…。

お芝居としてのキャラ像の変化と、キャストさんたちの実力向上・信頼の深まりが上手く響き合っての形だと思うんですけどね。
2017乱舞祭、幼子に手を取られたときのびっくりした顔とか、『てんてんてのひら』のどことなく幼くて合わせ方を探ってるような声から、ここまでの段階に来たんだなぁと…。
身体と心を得る苦しさ、けれど同時に、それを誰かと分かち合う手段を手に入れること。
今回の『歌合』エンディングにも通ずる歌の力を感じて、すごく思い深い一曲になりました。

 

あとぜひともいつか、湯上り組フルメンバーを見せてほしい!!ブロマイドとかで!!何の特典でもいいので…!!
って思いと、美麗値MAXのミュらまさ vs あの主張強すぎる「 村 正 」浴衣は何回想像しても笑うごめん、って気持ちが喧嘩します。
でも最終的にババーンと着こなしてくれると思うんだ!見てえー!!笑

 

 

描いていた未来へ 

(初演・阿津賀志山異聞)

 

ここにきてこの曲…!!
Brand new sky → Nameless Fighter → 約束の空 の流れでも思いましたが、今年の選曲が全体的に、まっすぐ未来を指して前進していくようなコンセプトで来てるなあと思ったところで!
この元祖光属性ファイトソングはやばい!!

描いていた未来へ 僕らは行くんだ
それぞれの愛を それぞれの思いを この手に抱きながら

2016年乱舞祭で大好きだった間奏の振りを、またステージ上で見られると思いませんでした…。

 
振り付けは2016と同じで、でもダンスが危なげなくかっこよくなった以上に、”その頃には描いてもいなかった未来”に来てるんですよ。すごいねえ…。

タイムトンネル抜けるみたいなモニターの映像が大好きで、毎回映像制作班さんありがとう…ってなってました。

 

2番Bメロの「夜の闇 眠る木々~」の丸さんといまつるちゃんの掛け合いもすき!

いまつるちゃんが加州・丸さんが三日月パートを担うことで、ちゃんと「阿津賀志山異聞」の曲だよ、大切にしてるよって言ってもらってるみたいで凄く嬉しかったです。
ハケ際に「まだまだ功績を狩りつくしていきますよぉ!」って岩融の台詞言ってくれるいまつる様が!最高です!!大好き!!

 

 

小狐幻影抄

脚本:白川ユキ


ふたつなき ものとおもひしを みなそこに やまのはならで いづるつきかげ
(古今集:月はひとつきりだと思っていたのに、この水底に、山の端でもないのに月が出ていることだ/紀貫之/巻11 881)


小狐丸が明石に語る、少し不思議な事件のお話。
ある夜、月を愛でていた小狐丸のもとへ、長曽祢・御手杵・堀川が次々に、もう一振の小狐丸を見たと告げに来る。
鶴丸に「こりゃ狐にでも化かされたんじゃねえのか?」と揶揄われ、まさか!と返答する彼らだが、小狐丸は四振への違和感に気づき…という筋立てでした。

あっぱれ見事な一話でした!!!!!

和歌をモチーフにした六つの話の締めくくり、そして実質座長である小狐丸が務めるに相応しいお話だった。
外部脚本を採用した今回の試みでは、今までに無かったカラーを沢山見せて貰えましたよね。
その分最終話では、作品全体の空気を『刀ミュ』の世界観にガッ!と収束させるぞ。その大役を担うのは小狐丸お前だぞ、とでも言うような采配だったなと…。

ここに古今集の編者で、かつ『歌合』大テーマである「やまとうたは、ひとのこころをたねとして…」を綴った仮名序の書き手・紀貫之の歌を持ってくるのがまたニクい。くそう。
現世ノリに馴染みまくった陽キャ本丸のようでいて、こういう雅趣もめちゃくちゃしっかりしてるのが刀ミュの仕事ぶりですよ…!!_(:3」∠)_


「綺麗なお月さんが、ふたーっつ。」
ここの画よかったですねえ…。
ステージの広大さが目一杯活きて、本当に本丸のだだっぴろい池の前にたたずんでるようなスケール感だった。
『つはものどもがゆめのあと』で曇りなき満月になぞらえられた小狐丸をこういう使い方してくるの、ほんとだめです好きすぎる。

後半あんなに神々しい話なのに、口いっぱいにあぶらげ頬張ってたじゃないか!って言われて「断じてそのようなことはいたしませぬっ!(プン!)」ってなってる小狐丸いとしいし、大真面目にお味噌汁の具心配する男士かわいいし…。
っていうかでっかい組の「「それは一大事だ!」」とか、鶴丸に驚かされて「「うわーーーーっ!?」」て逃げていくとことか、やたらユニゾン発揮してくれるのが楽しくてもうww
あと一話目でもそうだったけど、全く驚いてないのに「心臓に悪いですよ」っていう小狐さん、ホント三条そういう御刃たちだよね大賞。


最初反芻してたときには
「あれ、化かそうとしてる御手杵(影)や鶴丸(影)が『油揚げほおばってた!』『狐にでもばかされたんじゃ?』ってヒント出してくるの、どういう展開なんだ…」
って首傾げたんですけどね。
アッそうか、はなから化かしきりたい訳じゃなく、むしろ種をちらつかせていつ自分に気づくかの戯れを仕掛けてたのか!?
って思って見るようになってから、小狐丸がきょとんとしたり、「はぁ!?」って驚いたり、何か考え込んだりするたびに反応を伺う、影狐視点の楽しみを覚えちゃいました(笑


ちょっと不気味な狐ダンスも良かったですね~!!
「人の欲望か」のところの鶴さん、お面の下半分からニヤッとした口元がのぞく、なるほどこの画がほしかったんだな!って物を体現できてて最高…!!

曽「にせもまことも」贋作と真作の物語を負う、誠の刀の曽祢さんに
杵「ゆめもうつつも」炎の夢と、実体を失った現実に悩まされてた杵くん
堀「般若も菩薩も」鬼の副長が”慈母のように慕われる”ようになった姿をむすはじで見てる堀川くんと
鶴「死者も生者も」墓に収められ、また取り出された逸話を持つ鶴さん

表裏対立する概念を周囲に纏いながら、その中心で踊る小狐丸が楽しそうに笑ってるのがもう堪らない。
「狐にゃおもてとうらがある」
折り目正しく”舞う”稲荷明神ゆかりの神様であると同時に、いかにも妖めいた狐と息を合わせて”踊る”野狐の性もある!!
「さてと、では踊りますか!!」の声がめちゃくちゃ良い!
もーーすきーーーーー小狐丸かっこいいよおーーーーー!!


そしてツケ打ち→鼓の打撃音から満を持して現れる”真打”、もう一振の小狐丸。
これ、意味を理解した瞬間から、ぶわーーーって立った鳥肌が収まらなかったです。
本体と見紛う背格好、足腰の運び、小狐丸としての所作……クレジットなんか無くても、演じてる方は一目瞭然でした。

 

2018年夏、阿津賀志山異聞(再演)の日本公演。
網膜剥離によるドクターストップで出演できなくなってしまった北園涼さんに代わって小狐丸役を務めたのが、刀ミュの発足時から出演されてるアンサンブル・ダンサーの岩崎大輔さんでした。
限られた時間・とんでもない重圧の中で前例の無い代役公演を演じきって下さった、あの公演に対する思いは尽きません。

北園さんの小狐丸が復帰してくれて嬉しい。
でも岩崎さんの小狐丸も「本物がかえってきたからお役御免の代用品」みたいな位置づけにはしたくない。
岩崎さんが演じてくれたのも確かに『刀ミュ本丸の小狐丸』で、それは決して北園さんの存在と矛盾するものではなくて……みたいな、一口に言えない悲喜交々が去来する中の

ひとつはわたし ひとつもわたし

静と動 表と裏
私とお前 お前と私

鏡合わせの この心
向き合えば 影の如く
溶け合えば 鉄の如く

今 ひとつに戻るだろう
今 ひとつに戻るだろう……

この歌詞ですよ…!!!!!!
真打であり、影打である小狐丸。
原作小狐丸の「溶ければみな鉄よ」の台詞を仲立ちに、生じてしまった二振の小狐丸を”歌って、溶け合わせる”会心の一手!!!!!
こんな昇華の仕掛け、どんな愛情と思考回路があったら叩き出せるんですか。
意味が分からない。ほんとに分からない。

さらに続くのが、

人なりや 物なりや
神なりや 妖なりや
人なりや 物なりや
影なりや 我なりや……

2016年の乱舞祭で「物なりや、人なりや」と問いかけたのが、外ならぬ三条の面々でしたよね。
そして問われた加州清光が 「物であり人である俺は、全部繋ぐ。俺は『刀剣男士』だ!」 と答えたことに、意を得たりの表情で微笑んでました。
となれば上の歌詞の語るものは

「人であり、物である」
「神であり、妖である」
「影であり、我である」………

\もうむーーーーりーーーーー!!!(;;)/

選ばなくていい、切り捨てなくていい、狭間にあるモノは”どちらでもあれる”!!

狭間の存在を両義性の豊かさを誇る形でとらえてきた過去公演の精神が、こんなに美しく実を結ぶところを見られるなんて…。

2次元と3次元のはざま、「2.5次元」というジャンルに真摯な制作陣の方が築き上げて下さったものだから猶のこと、震えるような心地で見てました。

 

そして あの、ごめんなさいもうちょっと喋るね!!笑

ここまで過去の公演だの代役だの、完全にメタ視点の刀ミュ史を前提に語ってきてしまった訳ですけども。
そういう予備知識全部さっぴいて、ストーリーそのまま「あの狐面の下にはまったく同じ顔の小狐丸がいる」と想像する形で見ても、ほんとここ凄いと思うんですよ…!!

オモテは「表/おもて」であり「面/おもて」。
対してウラは、「裏/うら」にして「心/うら」である。
うらやましい→心病ましい、うらがなしい→心悲しい。目に見える「面」に対し、目に見えない「心」を表す言葉としてウラの語がある。
能『小鍛冶』を顕現の核とし、その中で”裏には我が名”を刻んだ小狐丸が、面(おもて)と心(うら)に絡めて表裏一体の妙を語るこの仕掛け、あまりにも熱すぎる…!!!!!

目に見えるもの、目に見えないもの。
おぼろな虚構も、確かな事実も表裏一体。
形ある「物」、形無き「語」、ふたつを束ねた「物語」よすがに顕現する刀剣男士を、能と、小狐丸と絡めてこう展開させてくるのか…!!って、腹の底から唸るような一幕でした…。

 

そんな話の末の

虚構も事実も、表裏一体なのです。
信じてもよし、信じなくてもよし。
私は信じ、もう一振の己を受け入れた。

──それもまた、よし。

この結び、もう最高。

この話の明石国行は、小狐丸の後を尾けていたと思われる。

なぜか?
あくまでファンサイドの妄想ではありますが、この本丸にはもう一振、夜にふらふら出歩いては得体の知れないことを繰り返す困ったじじいが居ますよね。
明石と同じく確かな”実体”を持つ一方で、”虚構”の上で小狐丸と表裏に名を刻んだ刀工の名を持つ誰かさんが(笑

穿った見方をすれば、葵咲本紀で三日月の行いを歴史改竄だと断じて対立しようとしていた明石に「さて、ことはそう一面的に行くでしょうか?」と投げかけたようにも見えますね。

はーーーーーいやもう……ミュこぎさん凄いよ…かっこいいよ…美しいよ……だめだもう語彙のストックが無くなってきた……。


──なんて、ここまで密度ぎっしりのどえらい話やっといて、入れ替わりトリックのちょっとした驚きと
「…御手杵はぁ~~~~~ん!!」
の笑いで締めてくるからほんとさぁ!!
今回もまんまとミュ審神者Pの手のひらの上ですよもう!!!笑
入れ替わりトリック、葵咲本紀の信康さん⇔スタントを見てたので仕掛け自体はすぐ分かりはしたんですが、それでも初回はめっちゃ気持ちよく化かされましたw
楽しかったなぁ…。ほんと楽しかったです…。


余談。
歌合見に行ったフォロワーさん達に何度も言ってたんですけどね。
私この脚本を担当したの、絶対いつもの御笠ノ先生・作詞は浅井さやか先生だと思ってたんですよ…。
今思えば冒頭の精度に少し違和感はあったんですが、一本だけ脚本の密度がおかしい!!ここまで深く伝統文化と刀ミュの世界観に接続して言葉の綾を織りあげる話、招待脚本の方に書ける訳がないでしょ!?っていう衝撃が強すぎて。

ところが蓋を開けてみれば、脚本・作詞ともに、担当されたのは白川ユキ先生。
………いや誰!!?
と思ったら、これまで御笠ノ先生の助手をされてた方・脚本は今回がデビュー作とのことで…!
これはもう本ッ当にやられた!!ばかされた!!笑
御笠ノ先生によるリテイク入り、かつ資料や知識基盤もある程度共有されてるとくれば、同じ路線に乗って来るのは頷けるっちゃ頷けるんですよ。
ただ、上で絶賛したような言葉の妙については紛れもなく、白川先生の誠実な掘り下げと筆力によるものだと思うんです。

キャストのみならず脚本においても”影打で真打””次代への継承”めいた流れがあったことが、本当に衝撃的でした。

 

 

響きあって

(再演・三百年の子守唄)

大会場で聴くのを夢見てた曲!!
大好き!!やってくれてよかったー!!!!
一万人単位の”波となってうねりだす歓声”の中でこれを聴くの、格別の体験でした…!!

疾走感たっぷりのみほとせ組、めっちゃ笑顔のこてくん、幕末スクエアでの登場からもうボルテージMAXですよ。
伽羅ちゃんと兼さんのふつふつ滾るような「情熱という名の約束を」最高だったし、
「触れ合う」
「跳ね合う」
「「重なり合う」」
で村正派の振り付けを再現する土方組の\ナイスコンビ!/ポジションありがとうございました。

あと「異なるBeatがぶつかれば」のところの篭手くんと杵くん、そんな体格差完璧なことあります????

 

蜻「This time ひとつのこらず…」
みほとせ公演での深みのある表現も好きだったんですけど!大劇場用の歌い方になってたここのパワー、圧倒されますね…!!

あと公演ver.で、丸さんの「声を聴かせて…」に応えるみたいに伽羅ちゃんが「響きあってーーーーー!!!!」ってとんでもねぇ声鳴らすの大好きだったところ、青江が引き継いでくれて嬉しかったー!
みほとせのストーリーで、伽羅ちゃんと神剣回想コンビそれぞれの、投げかける→応えるやりとりが好きだったから…。
めちゃくちゃ言いそうですもんミュっかりさん、「声を聴かせて」!
青江といえば、その直後の「刻ん”で”ーーーーー♪」が超かわいい~~~~~!!_( _ ∠)_
菊花輪舞は優雅なバイオリン独奏だったのにこっちはセッションでテンション上がっちゃったやんちゃな金管楽器!!かっわいい!!笑

 

最後の「Just give me clap and callーーーーー♪」の蜻蛉さん&兼さんのハモりも!!
めちゃくちゃ嬉しかったー!!!
ラジオで兼さん役の有澤くんが「みほとせ再演の曲買った!今までの作品の2部曲で一番好きかもしれない、ユニゾンの声の揃い方がすごい」って話されてて…その時点で幸せで…。
さらにそれを自分自身で、あの蜻蛉さんとタイマンで見せてくれたの熱かったです!!


2018年までは蜻蛉さん、頭ひとつ抜けたハイポテンシャル故にちょっと特別扱いというか、単身で見せ場担うことが多かったと思うんですよ。対等のデュオパート持つのは基本村正のみ。
でも2019は鶴さんを筆頭に小狐さん・堀川くん・兼さん、パート代わったりガツン!と声ぶつけたりできるメンバーが出てきてくれて…。
皆で強くなっていく本丸を、「響きあって 今が深くなる」のフレーズと一緒に感じられたの最ッッッッッ高でした。

…この曲「大好き嬉しい楽しい熱い最高」しか言ってないですね!!笑

まあいいや、そうなんだからしょうがない!!

 

 

百万回のありがとう

(みほとせ再演)

これはだめです。
このタイミングでこの曲はだめです。

けして平坦な未来じゃなかったとしても必ず
届け 最高のありがとう

それこそ決して平坦とは言い難い道を辿ってきてるミュ男士達にこんなん歌われたらさぁ…!
ありがとうのコールめちゃくちゃ頑張るしかないじゃないですか!!客降りにはしゃいでる暇なくなるわ!!笑

 

「共に歩む 道の先の先へ…」の青江の声の優しさがたまらないし、「両手いっぱいの~♪」の物吉君、そんな、そんなナチュラルに身体に響いてる良い声を…ウウ…。

そして「約束は絆に変わるのさ」の蜻蛉さん、お花背負った乙女ポーズがそんなに似合う東国無双どういうこと。温度差!!

 

10年後も20年後も

あなたと歩めますように

本当にそう思うよ…。
刀ミュ2部、かっこいい曲・コミカルな曲・大人でセクシーな曲・シリアスで切ない曲って色々あるけど、必ずどの公演にも
「笑顔になろう、一緒に歌おう」
「だきしめたい」
「だいすきだよ」
「大丈夫」
「ありがとう」
まじりっけなく、まっすぐできらきらした詞の曲があるのほんとすきです…。

去年の「大好きだよ」くらいの回数「ありがとう」言わせてほしかった!!

杵くんと丸さんが肩くんでると思ったら埋もれてたいまつるちゃんかわいすぎました(笑

 

 

 勝ちに行くぜベイベー!

(葵咲本紀)

今年のタオル曲は葵咲本紀から!
着席だし周りの御迷惑になっちゃいけないし、アーティストライブと違って手元でちょこっとだけしか回せないんですけど(笑)
それでも「まわせ~~~!!」の声聞くの大好きだからタオル曲ずっとやってほしい。
村正がいたら絶対「ショウ!ショウ!ショウ!」のところでアップ抜かれたんだろうな~!見たかった…!

 

あとこの曲、篭手くんが絶好調でしたねww
歌って踊ってるとこがすごい楽しそうなのに留まらず、バリエーション豊かなハート&ウインク&投げキスファンサを大盤振る舞いされていて…絶対あちこちの本丸のこてくんの研究ターゲットになってるよ…。

それから「Hit and run 燃やせハート 撃ち抜いて」のとこでフレームインしてくる鶴さんが!!
当たり前のようにくる~ん、って優雅に回転して入って来るのめっちゃすき!!!!!
鶴さん!そういうとこよ鶴さん!!

「ベーーーーーイベーーーーーーーー!!!」の蜻蛉砲気持ちよすぎるし、\よっしゃー!かったぜべいべー!!!/って帰っていくいまつるちゃん可愛すぎるよ…。

 

そして聞いて下さいよ。
この曲の時すぐそばで岩崎さんが踊ってて、目の前で「あお~~~~ん!!」やってくれたんですよ…。
背中反らしたすっごい\遠吠え!!/って感じでかっこよかった…。
あのでっかいエアハグする曽祢さんと、伽羅ちゃんのガン見ファンサを受けてる伽羅ちゃん推しさんも目撃しましたw

 ステージ上であんなにも輝いてる男士たちが動くと風を感じるような位置でにこにこしてるの、何年経っても慣れませんよ。凄いことだ…。

 

もう理屈でなく \これだぜ!!!!!!!!!/ って気持ちになる曲!!!!!
ドゥンッダドゥンダッ!ドゥンッダドゥンダッ!のイントロが流れた瞬間に「よっしゃキタァ!!」って客席に膨れ上がる熱気、なんかこう他にない圧倒的な強さがありますよね!!笑

開幕土方組のさ……シルエットの対照っぷりが最ッ高でしたね……。
そして今ハケたと思ったらポップアップで飛び出してくるいまつるちゃん、まじで機動が小天狗。

 

この曲になると眼ぎらつかせて牙剥いて思うさま荒ぶる男士達が大好きなんですけど、今年一味違ったのは蜂須賀!!
去年まではわりとしなやかに、品を保った状態の覇気で踊ってたのが、今年はかなりワイルドにガツガツ行くようになってた…!!階段に脚ガッて開いて座るレア須賀がいた!!
冒頭でスタンッ!てステージ乗り越える伽羅ちゃんは狼みたいでかっこいいし、むっちゃんの「俺たちの紋章」の吼え方も最高!
「We rock you おおおおっおー」でグラフィックポイ左右に振ってる青江はこんなときでもにっかりマイペース崩してなくてすごい。

 

牧伽羅ちゃんソロパートへの思い入れについては、『Nameless Fighter』項でさんざん喋ってしまった通りなんですが(笑
パステルのあの日見た夢を」の鳴り方がほんっと、真っ赤な炎が天まで燃え上がるような牧伽羅ちゃんの魅力全開で大好きです。

そしてそこに飛び乗って来る鶴さんがもう…!!
伊達紅白を、よりによってクライマックスに揃えること考えたひと!!審神者の爆ぜさせ方をよく心得ていらっしゃる!!ありがとうございます!!!!!
最初の馴れ合いキャンセラーとか、これ見ちゃうと完全に布石じゃんね…。
鶴さんのほっそい身体が泳ぐくらいの勢いで拳突き合わせる伽羅ちゃんかっこよかった…。

鶴さん役の岡宮くんが伽羅ちゃん役の牧島くんに「輝くんはライバルですから!」って宣言して、牧島くんも「じゃあ俺もライバルだと思うから!」って熱いやりとりしてそのつもりで歌合の楽曲見てたのに、打ち上げの時の岡宮くんが、新作のこと考えて不安になったのか「輝くん……ライバルですけど僕のこと助けてくださいね……」ってもじもじ言ってたってエピソード*1、追い打ちとして完璧すぎてなんも言えねえ。ハイクオリティなパフォーマンスと板の上下のギャップのバラエティパックじゃないですか新生ミュ伊達……。

 

そしてラスト、小狐丸渾身の「己に牙を剥け!」アップね!!
去年は欠席だった『獣』を会場センターで思いっきり唸ってくれる狐さん、嬉しかったなんてもんじゃない。

今年も燃やし尽くされました。
最高でした…。

 

黒き影、寇す

サブステージでで息づく妖しげな薙刀の影、そこに影から湧きだした時間遡行軍たちが集まって来る。
八振そろった彼らは、巨石と刀の控えるメインステージへと殺到します。
そしてあわや刀に手がかるかと思われたところで、彼らは白色の帯に阻まれ散っていく。
ここで最後に斃れるのも薙刀でしたね。

「結界を破る行為はお控えください」
ネタバレ禁止をかっこよく言ったのかなー?( ・v・)とか思ってた冒頭の注意事項は、劇中でこんな風に使われてたのか…!!って、初見時固唾を呑んで見てました。

 

台詞は一言もありませんでしたが、凄くインパクトの強いパートでしたね…。
刀ミュ世界の時間遡行軍といえば、結びの響、始まりの音の「犬・猫・かたつむり」こと、巴さんとの表裏一体を語られた彼ら。
そして葵咲本紀でも

明「こいつ(遡行軍)とあんたの違いはなんでっしゃろ?」
篭「違いは──……ない」

刀剣男士と時間遡行軍は、紙一重の存在であることが語られてました。
(重たいエレキ×バスドラムの音も、葵咲本紀の『鬼哭啾々』と同じでしたね…)

形を取ることのできなかったものたち≒忘れ去られた名もなき刀≒黄泉の住人が、今まさに形を取ろうとしているもの≒新男士≒生の世界に手を伸ばそうとして叶わず散っていくようなあの風景、毎回ウグ…って胸を押さえたくなります。
「お前と俺たち、何が違うんだ。行かせない。こちらへ来い」
とばかり、追いすがって引きずり戻そうとするみたいで…。

 

生者と死者の世界は隔てられていなければいけない。
祭りの一時交わるとはいえ、狭間の存在をあちらに渡してしまう訳にはいかない。

それでも篭手切くんの歌ったように「夢見るのは眩しいまほろば(楽園)」、いつか、いつか彼らも光ある場所へ……
と願ってしまうような一幕でした。
最後の薙刀が力尽きるその瞬間、シャン、と優しい鈴の音が鳴るのが、あの本丸が手向ける祈りみたいだった。

 

 

かみおろし・君待ちの唄

全体の総仕上げであり、種明かしに当たるパート。
もう、もう、まさに文字通り『神がかった』くだりでしたね……!!

上空から差す光、鳳笙の音とともに、篝火を携え浄衣を纏って現れる白皙無垢の美青年って…なんてものを見せてくれるのかと…。
正直ここの姿だけで、鶴さんがミュ本丸に顕現した意義分の仕事してしまってると思う。

 

交わされた歌物語 かみおろし
昇る篝火 まれびとまだか
まれびとまだか…

言の葉よ 依代となれ
歌の音よ 依代となれ

 

まれびと=来訪神。
折口信夫先生の表現を借りるならば「人にして神なる」「常世から時を定めて来り訪う」もの。
この語が出た時の「え、何、男士達は誰を、ナニを待ってるの?何が来ようとしてるの…!?」ってドキドキから一気にクライマックスへつながって行く、ここからのカタルシスは凄かった。

 

 「やまとうたは ひとのこころをたねとして よろずのことのはとぞなれりける」
 人の思いで紡がれた物語を縁とし
 この世に生まれ出ずるのは 歌も我らも同じこと…

もーーーーーーーこの!!これ!!!
 刀剣乱舞原作設定の「モノに寄せられる思いで形作られる」刀剣男士(cf.兼さん手紙)
  ×
 和歌は人の心を種に言の葉として成る、と語る古今集・仮名序
刀剣乱舞と和歌から『心』っていう共通項をくくりだして、『歌』を依代に『男士』を喚ぼうとするっていう!

『ミュージカル・刀剣乱舞ならではの概念をぶっこんでくる、この構成たーーーまらん…!!


そして鶴丸の「これより先は、神の領域」という宣言とともに、さらなる仕掛けが始まります。
この曲の!!人×刀の誕生を重ねる歌の密度が!!やっっっばいと思うんですよ浅井さやか先生の神業…!!!!!
うるさいのは承知なんですが、すごい燃えどころなので喋らせてください!!!ちなみに多大な妄想を含みます!!!!!!笑

 

ひとつ 心の臓が脈打ちはじめ
(玉鋼 水減し 小割り)

人間の鼓動の始まりと、作刀工程のはじめ、玉鋼を平たく伸ばして砕く鎚の音がリンクする。
この時、最初からあまり強く叩くと砕けてしまうので、力を調節しながら始めるんだそうです。それもまた、生まれたての小さな鼓動に重なるようでたまらない…。

 

ふたつ 赤き血は巡りめぐる
(積み沸かし 折り返し鍛錬)

積み重ねられた鋼は溶け合って赤々と焼け、不純物を火の粉として打ち飛ばされながら一つの塊になっていく。
鍛刀と言われたときに思い浮かべる、いわゆる力強い鍛錬の工程ですね。血を巡らすべく、強くなる拍動。

 

みっつ まなこはまだ光を知らず
(造り込み)

硬さの異なる鋼を組み合わせて、いわゆる芯鉄・皮鉄の構造を作る工程。
技法により微妙に異なりますが、縦切りにすると芯鉄が瞳孔のようにも見える構造になります。ちょっと無理矢理ですけどもね!笑

 

よっつ 手足は分かれ 指を成し
(素ーー延ーーべーー)

ここがすっごく好き…!!伸びやかな声といよいよ刀の形を取るべく伸びてゆく鋼、手足や指が伸びて人らしくなっていく姿が綺麗に重なる感じ、ぞくぞくします。

 

いつつ 耳は音の意味も分からず
(火造り 切先 鎬 茎)

ここはさすがに強引になってしまうのでこじつけません(笑)もし何か仕込まれてそうなもの、ご存知の方いらしたら教えて下さい。

 

むっつ 口はまだ言葉を持たず
(生研ぎ 土置き 焼き入れ)

焼き入れは”刀に命が宿る”瞬間だと言われます。どの時代、どの地域、どの刀工の作品であるかを雄弁に語る刃文が生まれる工程ですが、焼きを入れただけではまだきちんと見えません。
最後の最後……

 

ななつ その肺に空気を吸い込めば 君は産声を上げるだろう
(鍛冶研ぎ)

研ぎ上げられることによって刃文が現れ、一振の刀として誕生する。
ここの蜻蛉さん、あまりにも強烈な歌唱力の有効活用…!!霊威に満ち満ちた男神の迫力で凄まじかった!!!

 

そして呼応するように激しくなる曲調、タララタララタララタララ、と3連符で連なるピアノがまさに”奔流”!満ち満ちたエネルギーが刀に流れ込む様のよう!!

「こちらへこちらへこちらへ サアサア!!」と男士が声を上げ、審神者は最後の唱和を求められます。
国生み神話において火の神・カグヅチを殺した剣、そこに滴る血から生まれた八柱の神の名前を綴る歌。男士と審神者の声が溶け合ってリンクする、ちょっとゾッとするような響きが会場に満ちていく。
ここで印を結んでる男士、全然瞬きをしないんですよね…。とくに青江の、ぽっかり硝子玉をはめこんだような目が鬼気迫る様相ですごい。

「刀」「人」「神」「歌」で溶かす大仕上げ。
「「「「八つ!!!!」」」」
力強い唱和につづき、判者の鶴丸

 

 今こそ呱々の声を 上げたまえ

 
呱々の声=産声を上げるように呼びかけると、青く沈んだ静けさの中に、重い鼓動の音が響いて…

 

 

八つの炎・八つの苦悩

雄たけびのような声を上げ、若い男神を表す「神体」の面をかけた何者かが立ち現れます。
(和歌の神であり武神である『三日月』の面の方が状況的には合うと思うんですが、色合いや作りが若い気がするんですよね…。)

吾を呼び起こすのは 燃え滾る八つの炎
吾に与えられたのは 肉体と八つの苦悩
 
五薀盛苦 この身に宿る苦しみ 痛み 悩み
なぜ我を生み出した 

八つの炎→男士達が物語をくべた六つ+『神遊び』『かみおろし』で灯された二つ、合計八つの歌の忌火。
八つの苦悩→仏教において、生老病死の四苦と愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦そして五薀盛苦の四苦を合わせた八苦。

 

ただでさえ四苦八苦って
「人が生きるということは、それだけで苦に満ちている」
っていう観念でもあるわけですが。
五蘊盛苦は特に「身心があることで感じる・考える・想うものに心囚われ生まれる苦しみ」で……ほんと、これを男士への問いかけとして歌わせるんかと……

要するに阿津賀志の岩融が「戦の道具であった頃は…ただ主の思うままに従っていればよかった」とか、
みほとせ伽羅ちゃんが吐露した「この感情と言うやつは、戦うには重すぎる…!」とか、

これまでの作品で、まさに皆が悩み苦しんできたやつなんですもん。
「ただの武器だったときには、疑問も悲しみも持たずに済んだのに」って。

 

それでも男士たちは、

ともに戦うため 使命果たすため
どうか力を貸したまえ
貸したまえ…

一斉に手を差し伸べながら歌うんですよ…。
ここ、それぞれの男士の所作が全然違うのが胸にギュウッときます。
巴さんや伽羅ちゃんは、自分の足場で静かに説くように。
石切丸は歩み寄りながらいざなうような仕草をするし、鶴さんは強い瞳で見つめる、蜂須賀は請うように礼をする。
そして篭手くんは、どうか、どうか!と縋るように全身で訴える。

それにマレビトの応えて曰く、

生まれた訳は問い続けよう 
この身が語る物語を 紡ごう

この最後の音、高らかに歌い上げるんじゃなく「つむーーーごーーーーーぉ↓ーーーーー」って1オクターブ落ちる重さが凄い。
冒頭『神遊び』の「しばしとどめーーーーーーーん↓ーーーーー」と曲運びがリンクすることにゾクゾクしました。
顕現の儀の最後の最後、覚悟を肚に落として、錨を下ろすように、自分の足でしっかりと地を踏みしめて生まれてくる感じで…。


そしてみほとせ以来の、審神者のあの一声!!


「来たれ 新たなる刀剣男士よ!!」


面を外し、名乗りを上げる桑名江・松井江!!!!
悲鳴みたいな歓声、爆発する歓喜!!!
ぶわーーーーーーーーーって花が舞って、視界いっぱいに光があふれるあの感じ!!

あの場にいる審神者の皆さんと、めちゃくちゃスケールのでかい「ゲームの顕現シーンの追体験」してる感覚に、うおわーーーーーーーー!!!!!!って全身震える気分でした!!!


だってさ。
だってよ。
こんなん想像できなかったんですよ。
確かにこれまでも、色んなメディアミックスで、出陣、ドロップ、真剣必殺、刀剣破壊…ゲーム内の色んな要素をやってくれてました。
でもまさか、日課で毎日見てる『顕現』を、2時間半かけた『歌合』と繋げてさ。
ゲームをプレイして、目当ての刀がやっとやっと画面に現れたときの、あの「わーーーーーやったーーーいらっしゃーーーーーーい!!!(;;)」って感覚を味わわせてくれるってさ…

プレイヤー冥利に尽きるどころじゃないですよこんなの。
なんもいえねえ。

舞い散る花びら、彩り豊かな光がぱぁっと弾けての…

 

 

あなめでたや

\あなめでたやーーーーーーーーーーー!!/
2017祭の壮大なかざぐるま、2018祭のしっとりとした帰り道の次はどうなるのかと思ったら、かつてなく華やかで幸福感溢れるエンディングでしたね!

あっぱれ寿・松竹梅
桜わらい 花びら舞い踊る

\めっちゃ札使っとるやないかーーい!/
…は冗談として!笑

このエンディングが「千と千尋」「(ゲームの)大神」って言われてましたけど、ほんとその通りの図だなと…。
日本の神様は笑って、喜んで、歌って舞って、宴会するのがよく似合う。
葵咲本紀の「咲く=笑う」を、顕現の桜に重ねて来るのずるいよー!!

 

本丸の一振一振が、まるで精霊の言祝ぎのように一言ずつ歌っていく、あの流れだけでもすごく好きなんですけどね。
蜻蛉さんソロの、噛みしめるように静かな歌い方から「あっぱれ寿・松竹梅ーーーーーー」ってぶわーーーっと音が広がるのが、”父親の感無量”って感じでたまらんです。

歌うたう 桜さく
音おどる あなたと 歌合
あなたと 歌合 

こてくんがほんとにほんとに嬉しそうな満面の笑顔で可愛かったー!!
にこにこしている男士は問答無用でよいものです!!
きょとんと真っ白な表情であたりを見回してた松井くんが、周りの男士に微笑みかけられて、歌いかけられて、だんだん表情がほどけて歌いだすところとかね…。
赤ちゃんが周りの人の笑顔の真似し始めるあれじゃんね!発育の過程の授業でやるやつ!笑

鮮やかな、華やかな、優しい、温かい、幸せなエンディングでした…。

 


そして今年のエピローグも可愛かった(笑
兼・陸「「よっしゃあ!!祝い酒だ/じゃーーーーー!!!」」
兼「一丁飲み比べでもしようじゃねえか!」
陸「おまん去年もそう言うて、いの一番に潰れちょったが!」

とか、審神者の\知ってたwwww/の心の声が聞こえるやつ。
去年も兄者のパリ土産要求とかあったけど、さりげなく過去のネタ回収してくれるのだいすきですw

あと物吉君の「ほら、御手杵さんも!」、あれ脇差に懐かれまくってそうなミュ本丸の杵くんを象徴するフレーズって感じですき!
こてくんにも言われてたし、絶対鯰尾にも浦島くんにも言われてるじゃんね…そのうち肥前くんが顕現したら「おい御手杵、お前もだろ」とか言い出すよ。まちがいない。

「力仕事なら俺たちに任せておけ。な?」って、杵くん相手に他の男士よりさらに一段ラフになる蜻蛉さんも大好きだし、「俺も手伝おう」の8文字でフゥーーーーーーーーー↑↑って言われる蜂須賀には笑ってしまう。もはやちゃんとデレてすらないのに、ハイハイ祭り日にはちょっとだけなかよしこてつ!って了解が形成されてますね(笑)。審神者の消化酵素が活発。

 

そして、最後を結んでくれるのは「歌」といえばの篭手切くんと桑名くんor松井くんの会話でした。

「歌が聞こえたんだ。──懐かしくて。気づけば一緒に歌っていた」

「これからもっとたくさん、一緒に、歌って踊りましょう」

冒頭の『神遊び』では、鶴さんが
「歌とは、ひとびとがその思いを、よろずの言の葉に託したもの。」
と、歌とは何かを語ってくれてました。

それに対して、歌に招かれ顕現した松井くんは「気づけば一緒に歌っていた」って呟く。
これが、歌の持つ力・その働きを教えてくれたんだと思うんです。

仮名序の言葉を借りれば

力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ、男女の仲をも和らげ、猛き武士の心をも慰むるは、歌なり。

 

自分たちの心を編みこんだ歌を捧げて、彼岸よりのマレビトである新たな神を招く。

マレビトもまた己の心を歌い、問いかけ、そしてお互いの歌を溶かし合う。

同じ歌で歌って踊ることで、新たな仲間として共同体に加わっていく。

 

彼岸(あなた)の貴方(あなた)と歌合。

声と思いを合わせる『歌合』、美しかったねえ…(´;;)

 

そんな気持ちでいたので、カーテンコール前に「集え、我が刀剣男士達よ!!」の声で、最後に一振一振登場するシーンまで感慨深かったです。
あそこ、ステージ上に残されてた花びらが、皆の足元でちらちらするじゃないですか。
今回顕現したのは江の二振だったけど、きっとどの男士も同じように、望まれて、愛されて、桜のわらう中で生まれてきたんだなぁ…って、ゲームの顕現画面と重ねてじんわり来てたりしました…。

ミュ本丸も、自分の本丸も、ますます愛おしく思えた『歌合 ~乱舞狂乱~』でした。 

 

 

おわりに ~『八』の物語~

ミュージカル刀剣乱舞は”数のまじない”を大切にする物語だと思っています。
まじないっていうとスピリチュアルな何かみたいですけど、要するに過去の人々がモノや概念に託してきた思いを文化として学び、掬い取り、お話に編み込んでくれる、というような話。

 

かつて一番はっきりと扱われたのは、真剣乱舞祭2017の「九十九話で終わり、完成しない百物語」。
それに絡めて”欠けているからこそ終わらない”付喪神九十九神の物語が綴られてきたように思うと、以前長文ツリーを書いたことがありました。
(マジで冗談のように長いのでいま読まなくていいです!!!!!笑)

togetter.com


そして、歌合で主役となった数字は『八』でした。


万葉集古今和歌集から六首+『神遊び』『かみおろし』で灯された忌火=歌の炎が八つ
和歌に絡めた話に、巴さんと徳川家の2話を足して、短編のストーリーが八つ
平安・戦国・幕末を2回り+再演2本を足して、2019時点の本公演も八つ

(ただの8でなく、カグヅチを斬った剣の先・中・柄、それぞれから生まれた神の数と同じ3+3+2=8つの物語になってるのが凄い…

新刀剣男士の二振に与えられたのは、肉体と八つの苦悩仏教の八苦
イネイミヒタクク…で綴る神の名前が、剣と血から生まれた八柱
客降りに入る前の、ライブ曲も合わせて八曲


まぁーーようもここまで『八』を重ねたな!!!!!!!! という感じなんですが(笑

普通に思いますよね。
なんで『八』なの?って。


私はこれを、ミュージカル刀剣乱舞からのメッセージとして受け取りました。勝手にね!!勝手に!!笑
キーワードは『鎮魂から生誕へ』『新たな時代』

 

2016~2018年のテーマだった「祭」は、彼岸と此岸が繋がる鎮魂の場だった。
今年は行事自体を一新して「歌合」となり、彼岸の魂を鎮める代わりに新たな命を言祝ぐ場になりましたね。
それを念頭に考えたときに、八の数字を複数の重層的な意味で受け取れるなと思ったんですよ。

以下ちょっと細かい話なので、御面倒でしたら赤字だけ読んでください…笑


-------------

ひとつ。
仏教の八苦。
これは『かみおろし』項で沢山書きました。
生は決して幸せなことばかりではなく、ただ在るだけで、人はさまざまな苦しみに晒される。


ふたつ。
神道の聖数、八。
カグヅチ神話もそうでしたが、八は日本神話において「多いこと・盛んなこと」を表す、神威に満ちた数だと言われます。
日本国を表す大八嶋。三種の神器である八尺瓊勾玉八咫鏡
八百万の神、八千代、八岐大蛇、八咫烏、八握剣、天八衢……連ねれば枚挙にいとまがありません。

スサノオノミコトを祀る八坂神社は、弥栄(いやさか)神社と別称されることもあります。
天皇弥栄(すめらぎいやさか)に使われるように、ますます栄えますようにという祈りの文言にも通じますね。
恐ろしいものと素晴らしいもの、どちらにも使われる強力な数。


みっつ。
これは特に作中で言及されてはいないんですが…
個人的には今回のフィナーレで、仏教でもなく、神道でもなく、民間に流布した『八』を、実は一番強く連想したんですよ。
「末広がり」
運が開け、今後がより幸福に、より栄えてゆきますようにという”祝いの数”としての八でもあるんじゃないかと。

これを感じたきっかけが、ライブ曲の色調でした。

「どんなに険しくても前を向かす」(『Impulse』/みほとせ再演)
「Stay with me 進んでもっと」(『Stay with me』/みほとせ再演)
「Keep your head up! 超えて行け」(『Brand new sky』/むすはじ)
「ここがどこだって、ちゃんと歩き出すよ」(『Nameless Fighter』/みほとせ初演)
「この手は明日へと伸びてゆく」(『約束の空』/葵咲本紀)
「描いていた未来へ僕らはゆく」(『描いていた未来へ』/あつかし)
「ひとつ残らず輝き帯びた世界 君と作ろう」(『響きあって』/みほとせ再演)
「千年後も 二千年後も そばにいられますように」(『百万回のありがとう』/みほとせ再演)
「見果てぬ明日へまた とびきり走るから」(『勝ちにいくぜベイベー!』/葵咲本紀)

今年のセトリ、4年分の公演から持ってきてるのに、去年までバランスよく設けられてたバラード・シリアス・アイドルラブソング枠がないんですよね。
代わりに明日・未来・前進、そして共にあることに纏わる曲で揃えられてる、結構思い切った構成だな!?と驚きまして。
そこから改めて見返して、「俺たちは前を向いて進んでいく、だから一緒に来てほしいんだ」って伝えてくれてるみたいなライブだな、と思ったんですよ。

 

特に、わざわざあつかしからピックアップされた『描いていた未来へ』には、『まばたき』でも『Love Story』でもなくこの曲が選ばれた理由があると思うんです。

描いていた未来へ僕らはゆくんだ
それぞれの愛を それぞれの想いを この手に抱きながら

答えなんていらないさ 僕らは自由だ
悩んだっていいさ 転んだっていいさ
声の限りに叫ぶんだ
生きるんだ

まさに新男士に手向けるエールみたいだ…!!って聞こえて、なんかもう、ほんともう、胸がぱんっぱんですよ…(;;)

明日へ、その先へ、「頑張る人を元気にする」っていう刀ミュのコンセプトを歌い続けてくれたライブだって感じたんですね。


さて、これら三つの『八』の意味を合わせるとどうなるか。

 

「生きるとは苦しいことだ。苦しみ、痛み、悩み、さまざまな困難が絶えず襲い掛かってくる」

「それでも貴方という命は、いくつもの思いに支えられ、まるで神の為すような途方もない奇跡として生まれてきた」

「きっと未来には幸いがある。より大きな光がある。そこに向かって、俺たちと一緒に歩んで行こう」

 

新しく生まれた男士へのメッセージであり
第二章の黎明を迎えるミュージカル刀剣乱舞の意志表明でもあり
令和という新時代へのエール、そしてここに生きている命すべてへの肯定でもある

(ちなみに、いかばかりよきわざしてか…の『昼目歌』は、天皇の代替わりの祭事・大嘗祭にのみ行われる秘曲です。『令和』の出典の梅花宴で詠まれた「梅の花~」の歌使ってることから見ても、平成から令和へ、はぜってーーー意識してると思います笑)

 

全体を通して、刀ミュ・男士・人、あらゆるものへの大がかりな予祝(あらかじめ祝いの言葉を述べ、幸運を引き寄せる祈り)だったんじゃないかなあと。
あなめでたや!!と花びらの中で舞い踊る男士達を見て、そんなことを思った『歌合』でした。
(お百度祷歌のお地蔵さんの話で後に回すって言ったのがここです。奇しくも仏教の地蔵菩薩、石切剣箭神社のお百度石に民間信仰の子供の守り神、全ての要素が重なるようなシーンがあったんですよね。)

 


ちなみに、おまけでもう一つ。
仏教、神道民間信仰のほかに、和歌好き審神者としては、和歌にまつわる「八」も含ませたいところでして…!!
伝説上の『日本最古の和歌』って、どんなものかご存知でしょうか。

 

八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を」

 

『八』ですねえ!!!!!笑
古事記日本書紀において、日本で初めて読まれた和歌として登場する歌です。

文字も定まらぬころの神代の歌から、スサノオノミコトが三十一文字の歌を作ったことで人の世の歌が生まれた。
それが「八雲立つ~」の和歌、スサノオノミコトが出雲の国に妻と住むための宮殿を建て、八色の雲が立つのを見て詠んだ歌である。

…というのが、今回の歌合のテーマ「やまとうたは ひとのこころをたねとして よろずのことのはとぞ なれりける」の出典である古今集仮名序(+古注)にバッチリ書かれてるんですよ!!笑

めでたい雲が空に翻り

かささぎの声響き渡る

ぜってーーーーーー意識してると(略)

 

ちなみにかささぎについても加えると、「八雲立つ~」の和歌は「妻籠みに」とあるように、スサノオノミコト成婚の歌です。
かささぎは広い意味での瑞鳥ですが、七夕伝説で天の川に橋をかけるなんて言われる通り、男女や家族の結びつきの象徴でもあります。

ここで時間を2時間半ほど巻き戻してみましょう。
丸さんが最初の一首として詠んだ「あめつちの かみをいのりて あがこふる きみいかならず あはざらめやも」
言わずもがな、「貴方に会いたいと神々に祈っております」と男女の仲の成就を願う歌ですね。

…いや「あなたに会いたい」成就してるスゲェ!!!!鍛刀的にも和歌的にも!!!!!!


というわけで、先ほどの三種の八に加えて

「貴方と縁を結ぶことができてうれしい。これからこの本丸で、一緒に暮らしてゆきましょう」

というメッセージも加えられたらロマンだなぁ、と思った次第でした。

ハイここまででややこしい話おしまいですご安心ください!笑


----------

 


そんなわけで。
古今和歌集仮名序、そして歌合・乱舞狂乱に敬意を表し、

仏教の八
神道の八
人々の八
和歌の八

以上四つの『八』を以て、感想の結びとしたいと思います。

 

でもね。
今年も色々書いてしまったけど、言葉にすると「何を言っても理屈になってしまう(by巴さん)」んですよね。
こんな何万文字もかけた小理屈なんか無くたって、たぶんあれを1度見た方には

「なにかが生まれて来るってすごいことだ」
「新しい仲間、めでたい」
「あなたと歌合、たのしい!!」

全部ぜんぶちゃんと伝わってるはずで。
それが、それこそが、歌の持つ力だと思うんですね。

 

フォロワーさんの大好きなツイートです。(引用許可頂きました)
もうほんと、私の感慨もこれに尽きます。

誰よりも作り手の方たちが、歌と踊りの持つ力を学んで、磨いて、信じて、その集大成を私たちにぶつけてくれたんだと、そんな気持ちで毎公演観劇してました。

 

ほんとうに、ほんとうに、もはや言葉の追いつかない、とんでもない作品でした…。
この『歌合 ~乱舞狂乱~』を以て改めて、俺たちは『ミュージカル刀剣乱舞』だ!!という高らかな宣言を見せてもらった思いです。

彼らが向かう末広がりの未来を祈って、この先も楽しみに応援し続けたいと思います。

 


この作品に関わって下さったすべての方に~~~~~~~~~~

誉ポン!!!!!!!!

 

 

 

https://musical-toukenranbu.jp/pages/utaawase_ranbukyouran

M16『前進か死か
作詞:茅野イサム 作曲・編曲:YOSHIZUMI 振付:本山新之助 

【美的風靡】 
脚本:三浦 香

M17『夕涼み 時つ風』
作詞:浅井さやか 作曲・編曲:オレノグラフィティ 振付:桜木涼介 

M18『描いていた未来へ』
作詞・作曲・編曲:関屋直樹 振付:本山新之助 

【小狐幻影抄】
脚本:白川ユキ

M19『狐や踊れ』
作詞:白川ユキ 作曲・編曲:YOSHIZUMI 振付:DAZZLE 

M20『狐や踊れrep.』
作詞:白川ユキ 作曲・編曲:YOSHIZUMI 振付:DAZZLE 

M21『ふたつの影』
作詞:白川ユキ 作曲・編曲:YOSHIZUMI 振付:DAZZLE 

M22『響きあって』
作詞:miyakei 作曲:大智 児山啓介 編曲:児山啓介 振付:本山新之助 

M23『百万回のありがとう』
作詞・作曲・編曲:みきとP 振付:本山新之助 

M24『勝ちに行くぜベイベー』
作詞:miyakei 作曲:大智 原田峻輔 編曲:原田峻輔 振付:本山新之助 

M25『獣』
作詞・作曲・編曲:SAKRA Stage Arrangement:YOSHIZUMI 振付:本山新之助 

M26『黒き影、寇す』
作曲・編曲:YOSHIZUMI 振付:桜木涼介 

M27『かみおろし』
作詞:浅井さやか 作曲・編曲:和田俊輔 振付:DAZZLE 

M28『君待ちの唄』
作詞:浅井さやか 作曲・編曲:和田俊輔 振付:DAZZLE 

M29『八つの炎 八つの苦悩』
作詞:浅井さやか 作曲・編曲:和田俊輔 振付:桜木涼介 

M30『あなめでたや』
作詞:浅井さやか 作曲・編曲:和田俊輔 振付:桜木涼介

*1:spoon2Di Actors vol.9

【前半】歌合 乱舞狂乱感想 -歌と刀とかみさまと-

 

歌合、たのしかったーーーーーーーーーーー!!

 

f:id:taka_koro:20200722194307j:plain

そしてDVD&Blu-ray発売おめでとうございます!!
気づけば初見からもう半年以上、お前どんだけ書き続けてたんだってシロモノになってしまいましたが、もう毎年のケジメみたいなものなので…。ちゃんとまとまった感想残しておこうと思います。

 

★メイン推しは一応みほとせ組ですが、本丸みんな大好きです。
★作った人そこまで考えてないと思うよ案件を多分に含む ×考察 〇感想 です。
★ちょっと細かめに補いながら書いてるところもあるので、適宜サクッと読み飛ばしつつご覧ください…。

 

<目次>

 

 

まえがき


乱舞祭2016の『刀剣男士とは』。
乱舞祭2017の『物語とは』。
乱舞祭2018の『祭とは』。

昨年の集大成で『真剣乱舞祭』は一端幕を閉じ、新たな演目『歌合 ~乱舞狂乱~』になって帰ってきました。
(2017感想文:https://privatter.net/p/3060126
(2018感想文:https://privatter.net/p/4392915


テーマは勿論『歌とは』

サブタイトル発表されたときから、
「ミュージカル本丸が、ついに”歌”に真っ向勝負挑んできた……この制作陣が半端なことするわけない……」
って震えあがってたんですが(((∵)))
感想としては


どんな神業使ったら、刀剣乱舞に「歌・刀・神」の要素をここまで詰め込んで一本の作品に練り上げられるんだ!!?


って顎が外れて滑って飛んでいくような作品でした…。
その辺全部言及してくとえぐい重量になってしまうので、細っけえ話は潔く補足記事に回します!!笑


そして(既に言い尽くされてることではありますが)もうひとつ。
お芝居のパートをぐっと増量して『本丸で日々を暮らすミュ男士たち』を垣間見せてくれたことが、あの本丸のファンとして本当にうれしかったです。

碁を打つときの癖。
れっすんに励む子とそれに付きあう子。
おやつをくれるくれないの押し問答。
最近改良された畑の土に、お風呂上がりの髪の扱い。

日常のちょっとしたやりとりが、彼らが”生きている”ことへの立体感を与えてくれる。
しかもそれを、ちょっとした謎や不思議→その解答っていう折り目正しい短編オムニバス形式で見せてくれた上に、


「ところで、そもそも彼らは何やってるの…?」(謎)
  ↓
「ああああー!! そういうことだったのか!!!!!」(解答)

 

っていう大きな流れに繋がってくあの構成!!もーーーーーーたまらん!!!
それを達成するために、「アリーナクラスの会場でミュージカル」っていうどでかい無茶をしてのけたことまで、本当に、本ッ当にすごい。

毎年言ってるけど、毎度全セクション全力の創意工夫と研鑽奮闘の上で成り立ってるだろう、とんでもないエンタメを見せて貰ってます…。
いやーーーー……幸せですねえ……これも毎年言ってるね……。
そんなわけで、ここまで前置きでした!以下本編!!

 

 

前説

脇差かわいい~~~~*´`
キャスト前説あるから早めに席ついてね~って何回もアナウンスされてたけど、そりゃ良い子で15分前着席しますよあんなん。

堀川くんの兼さんモノマネが可愛かったり、物吉くんのあるじさまイジりがプロかったり、回替わりも毎回楽しかったですw 腕利きサポート集団・脇差組!!
あと最後に何が起こるか知ってる状態でイネイミヒタククを一生懸命練習してる篭手切くん見ると、がんばれ…がんばれ…ってほろっときますね…。

脇差の誰かさんがあの枠に入ってないのまで含めて楽しすぎる。
来年はこの脇差組に浦島君が加わるんでしょ…むりじゃんね…。
ううう虎徹脇差も揃ってほしいなぁ。審神者P、大変だと思うけど出陣登録どうかお願いします!

 

 

奉踊


今年は最初からクライマックスだぜ!!!!!!!!!!!!!


初日のあそこの「ヒエッ!!?」って気持ちめっちゃ覚えてます。

謎めいた巨岩。
ろんろん響く金属音。
神秘的な煙に包まれた一振の刀。
まるで幻影が湧き出るように現れる、白装束の男士達…

と思ったら \火柱ボーーーーーーーーン!!/ からの、座頭市タップを思わせる和太鼓、ハッ!ハッ!ハッ!の掛け声に手拍子足拍子!!
ななななに、何はじまった!?ってめちゃくちゃドキドキしました。
最初の\カッ!/で俯いた男士が一斉に顔上げるとこの、うっすらホラー感すらある迫力が大好き。

 

もおおこの!前から見ても後ろから見ても優勝デザイン!ありがとうございます!!

冒頭で滑り出てきた青江が、立ち止まる瞬間にカクンッて首揺らすところ、人形というか無機物じみててゾクッとしました…。
あとあのー、何ていうんだろ、いまつるちゃん達が斜め回転しながら手前に飛び出してきて、袖を振り下ろすようにダンッ!て着地するところめっちゃ好き…。
和服慣れした平安刀組はやっぱり美しかったですね袖さばき。でも物吉くんや御手杵みたいな洋装組の浄衣姿も嬉しかった!

”袖振り”が”魂奮り(たまふり)”に通じる生命力励起・魂呼びのおまじないだよみたいな話を去年の乱舞祭感想で散々したけど、それの全力ビジュアライズされたものを見てる感じでした。
上に下に翻る袖、回転につれて広がる裾、息を合わせて躍動する群体の迫力、もう熱かったのなんの。

巨岩信仰×今回のストーリー燃えについては補足記事にてゆっくり書きます!

 

 

神遊び

神性MAXの鶴さん、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ、しぬほどかっこよかったですね…!!!

「歌とは、ひとびとがその思いを、よろずの言の葉に託したもの。」

ときに神々の心をも動かすのが、『歌』に込められた想いの力。
口火を切る一番最初の台詞で、この作品における『歌』の定義をばちこーんと叩きつけてくるのだけで「ウオォやばい…」ってなってたのに、

 花の香に昔をなつかしみ
 鳥のさえずりに耳をすまし
 風に散る草葉の露にたもとを濡らし
 月傾く雪の朝に春を思う

微笑みながら優雅な美声で花鳥風月を語る鶴丸国永とか、夢に見たことさえなかったよ!!なにあれ…!!
うちの歌仙さんとか、多分このへんから配信かぶりつき最前列鑑賞ですよ。文系名刀オッケー頂きました。
どう考えても新刃の貫禄じゃないよあんなの…初見さんが見たらあの大所帯の座長ポジションの実力者だと思うでしょ…。


からの「さあ、歌え──さあ、遊べ!!」、そして鶴丸・小狐丸・石切丸が歌い出す

 いかばかり よきわざしてか あまてるや
 ひるめのかみを しばしとどめん しばしとどめん ──

 (どれほど良き業を行えば天が照らされるだろうか
  昼目神=天照大神をここにとどめたいことだ)

息が合ってるーーーーーー!!最後の「とどめ”ん”----」の低音が弦楽器みたいでめっちゃ好き…!!
歌詞は大嘗祭の神楽『昼目歌』より。
『歌合~乱舞狂乱~』の歌い始めがこれなの、もうほんっっとかっこいい!!

神楽は元々「かみあそび」と読むのが正しかった、なんて話もありますが
(かぐらは、いにしへは、神あそびとぞいへる/本居宣長『玉勝間』)
曲名『神遊び』の歌に神楽歌持ってくるのがもう…1曲目からガチofガチのやつ…。

 

「よきわざ」を文字通り善行と読んでも良いですが、ここは「良い芸能を見せたら」って取りたいと思うんですよ。
ご存じ天岩戸隠れの神話、

天照大御神が岩戸の中に隠れちゃったけど、アメノウズメという女神が俳優(わざおぎ/激しい身振り手振り)を行い、再び引っ張り出すことに成功した
・日本の鎮魂祭、そして芸能の始まりとされる神話でもある
・岩戸隠れは死の暗示、そこから再び姿を表すことは生命の復活と考えられる


これを思うと、オチを知ってる今となっては新男士を天照になぞらえての

 鶴狐石「「「さーて、歌と踊りの力で新たな神様を呼び起こしますか~!」」」

って宣言にも聞こえると!思うんですよ!勝手に!!笑
霊力ガチっぽい平安刀並べてくるあたりにミュ審神者Pの本気がうかがえます。怖いわ。加減して。

 筆を持て (あぶりだされる本性)
 歌をつづれ(さらけ出される欲望)

ただ美しいばかりでなく、欲を暴き、炙り出す力を歌う男士達にはゾクゾクさせられました。
あと杵くんの「かみがみにささげるうた 交わされるうた」の低音は良すぎた…。
本公演1部の勇ましい武人曲とも、2部のアイドルソングとも違う、『付喪神』サイド全開の曲が聴けるのも年末フェスの醍醐味ですね!!!

 

 うたうたう さくらさく おとおどる あなたとうたあわせ
 ひだりに みぎに あおに あかに 神のまにまに


手を差し伸べる振りにつれて、画面全体がゆら、ゆら、ってゆれるの、くらくらするほど神々しかったよ…。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ここから短編集パート。
形式としては

 

①今剣ちゃんが左方(赤/万葉集)・堀川くんが右方(青/古今集)の講師として、和歌を一首詠みあげる

wikiでは逆になってますが、後世の歌合の模範となったといわれる天徳四年内裏歌合やさらに歴史の古い亭子院歌合では、左方が「赤色ニ桜襲」右方が「青色ニ柳襲」の装束だったとあります『殿上日記』『亭子院歌合日記』)

②それにちなんだ短編エピソードが語られたのち、今度は主人公の男士がその和歌を短冊に書きつけて火にくべる

 

という形で進んでいきますね。
前半は現実の『歌合』に取材しているけれど、まって後半のその行動なんなの!?(゜、。;)感が、初見時すごい楽しかったですw

予習していったからこそ、逆に混乱させられるっていうこのニクさ…!
おのれミュ審神者P!! すき!!笑

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

懐かしき音

(脚本:浅井さやか)

 

あめつちの かみをいのりて あがこふる きみいかならず あはざらめやも
万葉集:天地の神々に祈りをささげて思い焦がれているあなたに、逢えないということがあるでしょうか?いいえ、必ず会えるはずです。/作者不明/巻13 3287)


舞台に現れたのは、縁側、碁盤、そして内番姿の石切丸。
碁石が鳴る音を聴いて、
「この音を知っている、なんだか懐かしい気がする。さて、何の音だっただろう…?」
と浮かんだ疑問に、本丸の仲間たちが「自分はこの音に聞こえる!」って答えていく筋立てでしたね。

この!!ミュージカル刀剣乱舞 ~花丸~ 的なほのぼの多キャラ話!!
こういうのを見たかったんですよ…!!!!
あの本丸の子たちが、部隊跨いで楽しそうに過ごしてる姿をたっぷり見たかった~!
しかもトライアルから作詞で刀ミュ本丸に携わってきてくださった、浅井さやか先生の脚本で見られて…ミュ本丸の彼らの物語と、ほんとにしっかり地続きで…。
すごく幸せでしたありがとうございました。
(好きすぎてこのパートだけやたら長話になりました…!他はここまで長くないです!笑)


まず冒頭の曲が良かったですよねえ…。
目を伏せて耳を澄ます横顔がお人形さんのようだし、「いつの日の記憶か…」の音、クラリネットみたいな優しい柔らかい音色が堪らないです。

「思い出せないなぁ、なんだっけな…」って話なのに、全然ジリジリモヤモヤした感じが無いのは、ひとえに丸さんのご刃徳ですね(笑
これまですべてのフェスで「一話目」「先頭」を担ってきた祭礼刀・崎山丸さん、4年目ともなれば小動ぎもしない安心感でいらっしゃいます。
(北海道公演では、音の問題か絵面の問題なのか、碁石鳴らすときにガシャ!!ジャラッジャラッ!!って結構大振りな動作してて、い、石割れちゃう!お手柔らかに!!;って焦ったんですが、最終的にはだいぶ自然な感じに落ち着いてて安心しましたw)

 

碁盤囲んで平安太刀がつるんでるあの空間も嬉しかった!!

鶴「ここで切れないようじゃ、石切丸の名に恥じるんじゃないか?(`・∀・)」
石「私は戦があまり好きではないのだけれ、ど。」
鶴「って言う割に、ずいぶん好戦的な手を打って来るじゃないか」

石「(石を取られて)あっ!君も…!」
鶴「これくらいやるさ(`・v・)」
石「じゃあ……、ここ」
鶴「うぇっ!?」

はい大好きなやつーーーーーーーーー_(:3」∠)_
戦は専門じゃないといいつつ攻め手が積極的な丸さん vs 軽口で挑発しつつ意表ついてくる鶴さんの攻防戦!
こんなのミュ三条好きの急所に刺さるに決まってる…!!
かと思えば

杵「その音、──ああ、いや、なんでもない」

陸「ぱちぱち、ちゃりちゃり。そろばんじゃ!」

物「よくお相手をしたものです。ね!」
伽「…そうだったな」

炎の夢、商い上手の龍馬、家康に仕え育てた時の思い出…
ひとつの音から、来歴・元主・過去の作品の出来事、さまざまな物語を想起する男士に次々ギュッて胸掴まれるから、ミュ本丸だいすきおばけは1話目でHP半分以上持ってかれましたよね…早いわ…


そして種明かしされる、丸さんの”音”の正体ですよ。

 いま私の耳をくすぐる 乾いた石の音
 この音に似た響きを 私は知っている
 そうそれは──
 「この音だよ!」

それは石切丸の根幹をなす、”人々が祈りとともに玉砂利を踏みしめる音”!
中央の大階段で丸さんの踏み出す足に玉砂利の音が重なる図が、ほんっと良すぎた…!!


あのですね、この『懐かしき音』&リプライズ、3拍子じゃないですか。
むかし演奏の曲想表現として習った言いまわしに、「ワルツは一人じゃ踊れない」っていうのがありまして…。

3拍子は、手を取って一緒に踊る誰かをイメージさせる拍子。
だからゆったりと奏でれば舞踏会のように優雅に、短調で奏でれば相手を求めるように切なく響く。
そして上のパートみたいに軽やかなテンポで明るく奏でれば、どこかあどけなく人なつっこい、ほほえましい曲調になる訳ですよと!
(阿津賀志いまつるちゃんの『きらきら』とか、葵咲本紀篭手くんの『未熟な私は夢を見る』の3拍子も近いニュアンスありますね)

 

その感じが、人の願いに寄り添い、誰かと歩調を合わせながら過ごしてきただろう丸さんにぴったりで、この曲めっちゃくちゃ好きなんです…( ∩∩)
もうここまでで大概お腹いっぱいなんですが、流石は浅井さやか先生、ここからさらに重ねてくる!!笑

 幾度 幾度願えば とどくかな とどくかな
 何度 何度祈れば かなうかな かなうかな
 一歩 一歩 重ねて一歩
 一心不乱 お百度参り

 一意専心 お百度祷歌 

任務であんなにも「いくら祈っても零れ落ちていく命」に悩み苦しんだミュ丸さんが。
それでも「届くかな、叶うかな」って願いながら、本丸に溢れる”生きている音”を慈しみながら、歩みを重ねていくんですよ…(;;)
小さな一をこつこつ積んで、やがて百に至るまで。
日々の励みを大切にする原作の丸さんと、お百度参りの精神をリンクさせてくれるような歌詞だったなと!


実はね、『懐かしき音』の歌いだし聞いた時、最初ちょっとびっくりしたんです。

 いつか見た空も いつか踏んだ道も

 ほどよく色あせてゆく …それでいい

今までの刀ミュって「覚えている、忘れない」ことが救いであり、「忘れられる」ことはとても悲しく恐ろしいものだって描き方をされてたと思うんです。
でもこの石切丸さんはその狭間、「ほどよく色あせてゆく」ことをおっとり肯定するんですよね。

みほとせ後日談としても胸がいっぱいだし(cf.物吉君と伽羅ちゃんの会話)、
「深い悲しみも、涙に暮れた夜や叫ぶ声さえも、いつか『懐かしい音』になってゆくよ。それでいいんだよ」っていう、新たな魂への柔らかいメッセージにも感じる。
時につれて遠くなる、それでも失われる訳ではない記憶の優しさを歌う石切丸さん。
心に沁みるようなお話で、歌でした…。


あとは箇条書きでこぼれ話。

●お百度の輪に加わる前の、逆の方向を見てるシンと静かなたたずまいの丸さん、何を見てたんでしょうね…。
毎回お百度組の小芝居見ちゃってて全然気づかなかった。
畑仕事してる伽羅ちゃんと、吾兵の思い出…?
パッと振り向いて、両袖持ちあげてぽくぽく歩く姿とのギャップがえぐいよ…!

 

●鶴「じゃあ勝負はおあずけだな!」
ほらーーーーいつものやつーーーーー!白黒つけなくていいミュ本丸!鶴さんそういう仕込みするんだから…!!

 

ツイッターで「あれ? 石切劔箭神社に玉砂利あったっけ?」って話が出た途端、まさかの神社公式さんが「ございます(・v・)」って写真のっけて下さったの嬉しかったですw
審神者に優しいいしきりさん…。

 

●丸さんの「壁にぶつかったとき、人は神に頼ることもある」に小狐さんがニッコリ笑って頷くときの、そっか彼もまさしく神頼みの刀なんだっけ、とか!
玉砂利を踏みしめる音に「ああ、懐かしいですねぇ!」ってやっぱり嬉しそうにするのとか!
お社の刀感マシマシの小狐さんごちそうさまでした!!
普通にどこかのお稲荷さんの玉砂利の話でもいいんですけど、石切神社所蔵の小狐丸が聞いた音もちょこっと含まれてたりしたら嬉しいですね…。

 

●神様といえば、杵くんがお地蔵さんをお百度石に使ってしまったことに対する
陸「こりゃあバチがあたるぜよ!;」
石「でも、見てごらん。このお地蔵さん、笑っているよ」
のくだり。
一応仏教の像であるお地蔵さんを、神道の石切丸が促したお百度参りに使って大丈夫か!?笑 とか、いやでも意味が無ければ刀ミュはこういうことしないと思うんだ…という話は一端後に回しまして!

「強引かよ!?」って言われてた「笑っているよ」に関しては笑、”子供と遊びたがるお地蔵さん”のお話を浅井先生がご存知だったんじゃないかなーってちょっと思ったんですよね。
ざっくり要約すると
「子供がお地蔵さんを転がすだの小便をかけるだのしながら遊んでいたので、通りがかった大人がなんて罰当たりなことを!と叱りつけて、子供が来られない場所にきちんとお祀りした。
するとその大人の体調が急に悪くなり、夢枕に立ったお地蔵さんに『せっかく子供たちと楽しく遊んでいたのに何をするんだ。元に戻してくれ』と怒られた」
っていう民話。全国にある、テンプレート的なお話なんですよ。

(福島) http://hukumusume.com/douwa/pc/minwa/08/28.htm
(長崎) https://www.ehonnavi.net/ehon00_opinion.asp?no=14674
(愛知) http://www.net-plaza.org/KANKO/toyohashi/taiboku/choraku-hinoki/densetsu.html
(東京) https://marukokawa.exblog.jp/5939070/

地獄からの救い手であり、子供の守り手の性格も持つお地蔵さん。
少なくとも民間信仰では、人の子に寄り添って戯れるのが好きな、慈愛の菩薩さま。
あの本丸の子たちが自分の周りをくるくる回りながらする願い事も、たぶん笑顔で見守ってくれてたんでしょう。
(そして男士達は、よくよくお礼を言って元の場所にお帰ししたでしょう笑)

これから産声を上げる男士に幸いがあるように、という意味合いも兼ねてお地蔵さんが登場したんだと良いなあと、勝手に妄想した一コマでした*´`

 

 

根兵糖合戦

(脚本:畑雅文)


 よのなかは ゆめかうつつか うつつとも ゆめともしらず ありてなければ
古今集:世の中というものは、いったい夢だろうか、現実なのだろうか。現実とも夢とも分からない。あってないようなものなのだから/作者不明/巻18 942)


\ドドドドドン!/
陣太鼓の音で始まるのかっこいいね~~~ 勇ましく鍛錬してる蜻蛉さんめっちゃ決まってる…!!

…って思った時には、まさかこの空気が開始1分も持たず、刀ミュ始まって以来のギャグ&カオス全振り小話になるとは思いもしませんでしたよ!!w
ミュ蜻蛉さん、実は中の方がすごいお笑い好きみたいで、そういうところもコメディ仕掛けやすかったのかもですねえ。

隊長権限で持ってる根兵糖をあの手この手でねだられ、こんぺいとう尽くしの悪夢を見てしまう蜻蛉さん。
あくまで自然な流れを装う(装えてない)曽祢さんも、登場ドヤ顔「やあこんぺいとう☆」のにっかりさんも面白かったんですが(笑
堀川&安定の
安「うわ~ん!いいじゃないかこんぺいとうの100個や200個くらい!><」
蜻「どれだけ食う気なんだ、無いぞ!#」
からの日替わりが毎回凄くてw

「ウッ、言葉の槍が刺さった!堀川、抜いてえ~!」
「は、はい!(抜く)……あ!兼さぁ~ん!(安定にブッ刺し直して駆け足でハケる)
「ええーーーー!!???;;」

の回とかお腹よじれるかと思いましたww愛知だったかなw


イケボ審神者から「またこんぺいとうが現れました。」って言われてる時の蜻蛉さん、
当然ながら何十回とやってる流れのはずなのに、毎回ドアップ大画面で完璧な「………はぇ…?(゚д゚ )」を披露して下さってて凄かったですね!笑

あんなに「ど、どうしよう、俺は何したらいいんだ、何かそれっぽいことしなければ」って感じでおろおろ戦場にいる蜻蛉さんあらゆるメディアミックス媒体で初めて見たし、
堀川君の「疲労こんぺいとうですね…」の使い勝手が良すぎるの勘弁してほしい。
あんまり常用してると職場で口走っちゃいそうですよ疲労こんぺいとう。

 

あとこんぺいとうの筋をやってしまった巴さん、蜻蛉さんに「今すぐこんぺいとうに戻ってこんぺいとうしよう!」って言われた時の辛そうな顔が上手すぎてww
「ちょっと!! それはいくらなんでも酷すぎますよ!!#」って堀川君が食ってかかるくらいだから、「(もう役立たずだから)今すぐ本丸に戻って刀解しよう!!」くらいの聞こえ方したんですかねw
皆さんの演技力のステ値が追い打ちをかけてくる。

悪夢が覚めた後の、どう見ても様子がおかしい蜻蛉さんに対する
「僕らがあんまりこんぺいとうを欲しがったから怒ってるんじゃ…!?」「Σおれも欲しがったぞ」「ぼくもだ!」「俺もだ!」
の息ぴったりのウェーブといい、豊かな表現力に裏打ちされたフルスイング・カオス、まじで手に負えませんね!!?(*とても褒めてる)


からの~~~刀ミュ史に残るエクストリーム・ナンダコレ・ソング、『CONFEITO』!
後から気づいたんですけど、この編成の6人の俳優さん全員、自分名義のCD出してるアーティストさんでしたね…。
ギャグだからこそ、実力ガチであればあるほど面白くなるやつですけども!!カードの切り方の思い切りが良すぎる!!笑

特にいつか見たいと思ってた堀川くん&蜻蛉さんのハモリを、このパターンで見ることになろうとは。
見るからに勇ましい筋骨隆々の偉丈夫が上ハモで、その体の影にすっぽり隠れちゃうような美少年が下パート歌ってるんですよ…視覚と聴覚がバグりますね…。

あとラスラビ前の歌詞、

 いざ交わる瞬間 桜が咲き 刃が唸る

\特ついてんじゃねーか!!/
ってフォロワーさんのツッコミにむせるほど笑かされました。
どれだけ食ったんだ根兵糖!!!!!!!
(根兵糖1個で500経験値、特25の男士だったら必要経験値56,800で、ほんとに100個以上食べなきゃいけない計算ですね…)(伏線回収すな)

 


(※この先一瞬プラスでない感想が出るので、ひっかかりそうだな…って方は小さい字の部分飛ばしてください;´人`)

 

実はですね。
このお話、初めて刀ミュで「あっ、Not for meだ」ってはっきり思ったシナリオだったんですよ。
理由は単純、今までの刀ミュで個人的に好みだなーと思ってた
 ・キャラを使って舞台舞台した笑い(連発怒鳴りツッコミ、振り回される真面目くんetc...)をもぎ取りにこない
 ・誰かが批難されたり気まずい思いをする姿をギャグにしない
みたいな部分の逆を、思いっきり前面に出した脚本だったので…。
https://twitter.com/taka_koro/status/952526178794917890

ただ、今までにないモノが出たってことは、要するに味付けの幅が広がった訳ですよね。
私の口はびっくりしたけど、逆にめちゃくちゃ楽しかった!今までで一番笑った~!!って方も絶対いると思うんです。
むしろこういう前のめりなエネルギーこそ芝居の面白さだ!!って考え方もあるからこそ、”舞台舞台した笑い”になってるんだと思いますし。

ぶっとんだ悪夢だって設定や、起きた後の蜻蛉さんへの反応が\エッ何あいつ…ドン引き…/じゃなく「「「らしくない!!根兵糖のねだりすぎを怒ってるのかも!?」」」なあたりも、ちゃんとフォロー入ってる。
一口目でおっと…?って引っかかりはしたけど、満を持した精鋭男士のエンタメパワーで気が付いたら完食してたよ。場面場面は間違いなく面白かったんですよ!!笑


Not for meだからこそ却って、安牌に甘んじず新しいところに行く・やるからには半端なものは作らん!!っていう姿勢を強く感じた一幕でした。
 

 

mistake 

(初演・阿津賀志山異聞)


開幕ミステイクはずるくない!!!!?????


って初回メモにでっかく書いてありました!!笑
そんな、大富豪の1ターン目でジョーカー出しちゃうみたいなさあ…!!

なんていうか、いよいよ三条feat.清光っていう「レジェンドチームの代表曲」から、「本丸全体の通過儀礼」になってきたみたいな…。
貴方も我が本丸の男士ならmistake犯せるでしょう?みたいな。

ファンの思い入れも深く、出せばゴリゴリに盛り上がるのが確定してる曲を、惜しみなくポーン!と1曲目に出せちゃうの熱すぎましたね。
鶴丸役の岡宮君が、雑誌*1「『mistake』を自分も歌える日が来たんだ!って思ったら感動しちゃって」って話されてたのがすごく印象的でした。

兼さん役の有澤くんがラジオで言ってた「mistakeの開幕ポップアップがむっちゃんって決まったときに稽古場で歓声と拍手が起こった」って話といい、この曲に纏わるエピソードは沁みますね…。
そしてやっぱり要所要所で三条見ちゃう。センステで踊る彼らを今年も見られてほんとに嬉しかった。

伽羅ちゃんの「君は蜃気楼」の声が際立って重たいの最高だったし、兼さんが「きみ↑となら~!」の高音を思い切りよく当てに行ったの超かっこよかった。
冒頭の目伏せる杵くん美しすぎるとか、「戻せない時計の針の向こうへ」の指クルクルする物吉くん最高とか、伽羅ちゃんのめっちゃ良く鳴る金管楽器みたいな「この夜が明けるまで!!」とか、もう全モーメントが決め所でしたね…。

兼さんとか物吉君とかむっちゃんとか、登場時にはよいしょよいしょって先輩についていくポジションだった男士の役者さんが、別の作品で主役経験して”主演級・座長級”として貫禄のパフォーマンス持って帰ってきてくれるのも幸せすぎました。
どんどん層が厚くなっていくミュ本丸を、2部曲筆頭の『mistake』で感じられる。
最高の開幕でした…。

 


~MC~
今年は1回こっきりのMCパート、「主~!」って呼びかける第一声鶴丸!!
「なっ、伽羅ぼ」「慣れ合うつもりはない」
肩組まれそうになった腕を見事によける、馴れ合いキャンセラー完璧な伊達組の間合いすごかったですねww

 

「俺は刺すしかできないんだって!;」って焦る杵くんに「オイオイ刺すことしかできねえだァ?」って絡む兼さんがしっくりきすぎて笑ってしまったし、小狐さんの「期待していますよ、おてぎねぇ~~!^^」のあっけらかんとした声が、アッこの御刃も確かに自由人三条の一角だ!って感じで可愛くてもうw
明石の「早ぅ肚決めた方が楽になるでぇ…?」ってそそのかしがエデンの蛇っぽくてたまら~ん!と思ってたら、説得力に満ちた伽羅ちゃんの頷きがカメラに抜かれるあの間も笑った。
伽羅ちゃん苦労してるんだねえ…しってる…がんばれ…。

御手杵のコーレスも毎会場大好きでした。
特に北海道公演の 杵「どんどんどん!」 審\海鮮丼!/ は訳わからなくてしぬほど楽しかったw
\どすこ~い!/とか\しるこくれ~!/とか、なんなの刀ミュはそんなに審神者たちをはらぺこマンにしたいの。
つられて海鮮丼食べちゃったよ。美味しかったです北海道。

 

Impluse 

(再演・三百年の子守唄)

私の中の『歌合』、ひとつの頂点です。
千秋楽配信を聴いたとき、酸欠でしぬかと思いました。
生でなく回線越しの歌声で、腰が抜けて歩けなくなったの生まれて初めてだったよ…。

千秋楽ver.を聴いたときの反応がこちらで

既に思い入れを語りまくってしまった分がこちらになります。


簡潔に言うと
「カンパニー筆頭の歌唱力を売りにした村正派デュエットを、いくらポテンシャル高いとはいえ新刃男士にふるなんて鬼か!?悪魔か!!と思った」
「けどその困難もプレッシャーも全部背負って『蜻蛉切鶴丸のImpulse』を作り上げて下さった、その技術と気概に心をガックガクに揺さぶられた」
という話です。

 

もうこの曲どうにもこうにも、いわゆる巨大感情というやつを持て余してしょうがないので、
歌詞の全フレーズの表現について感想を書く
っていう訳の分からないことをします。
(©『Impulse』 作詞:Kenji Kabashima)
(*この全歌詞引用をやりたいがために、今回はprivatterでなく、JASRACと歌詞掲載包括契約済のはてブロで投稿しました…笑
いや厳密に言うなら、今までツイッターやベッターに載せてた分はどうなんという話にはなってしまうんですが。
この程度の部分引用ならまあ…そこまでガチガチに運用する人も滅多におらんし…という範囲を、今回は流石に逸脱してしまうよなと思ったので、こういう形を取ってます。
包括契約・歌詞の引用の著作権についてはこちら参照。https://www.jasrac.or.jp/info/network/ugc.html https://www.bengo4.com/c_23/n_244/

マジでフルフレーズ書いてるので、飽きたら★印で囲まれてる分スルーして下さい!!笑

 

★★★

 

これから語るすべて
遮るものすべて
すべて……

ふわーっと広がる澄んだ音のイントロからの、タンッ!と鋭く響くスネア。
この削ぎ落した入りが、何度聞いても絶妙…!!
優雅にターンしながら現れた蜻蛉さんが、透明感たっぷりの高音で二振ぶんのパートを歌い上げます。
千秋楽、のっけでぶちこんできた「すーべぇ↑てーーーーー…」のアレンジが力こもっててすごく良かった!!
最初見たときは蜻蛉さんに目が吸い寄せられて、エッッこの曲をソロで歌うの?まさか村正サプライズ登場とかないよね?え?まじ??っておろおろしてたんですが…

「「That's all I have!」」

ここで\!!!!????/ですよ。
鶴さん!!?鶴さんと歌うの!?これを!!??エエエエーーーーーー!!???って。
驚いたか?(`・∀・) じゃないわ心臓止まるかと思ったわ!!!!!!
配信カメラで抜かれた片頬でニッと笑う表情、見るたび村正じゃん…!!リスペクトじゃん!!!ってなってしまってほんとにむりです。

あと次に抜かれる蜻蛉さんの右手が、ダンスの時ちょっとひっかかるみたいに震えるんですよね…。
ミスというほどにはならない、それでも蜻蛉さんらしからぬ小さな綻び。
一体どんな想いであの舞台を踏んでらしたんでしょうか…。

 

まるで 見てきたかのように
こころは 歩みを止めてる

ここね、文字で表現するのが難しいんですが、
「こ、こぉろは あ-ゆぅ、みぃを とぉンめ て↗る↘ぅ↗」
みたいな、村正の歌唱の細っっかいニュアンスまで寄ってて毎度ウワーーーーってなったんですよ…( ∩∩)
たったワンフレーズで、元祖のバージョンを大切に細かく聴きこんでることが分かる。
ここに限らず、ステージ上にいるのは二振なのに、終始その場にいない村正の存在を痛いほど感じる歌唱でした。

知りもしない世界から 
手を差し伸べられてる

ここの歌い方はほぼ原曲通り。
でも、差し伸べられた手を追いかけるようなどこか心細そうな表情が、村正派ver.の地に足の着いた歌いぶりとの差でギュウっとなる…。

感じたことないような
不安と衝動にかられながら 夢を見てた

ここで一気に、鶴さん自身の歌唱・発声に変わる!!
"じ"の高音はまだ苦手だけれど、「かられなぁ~~~がら」の口を大きく開けたアの音が朗々としてて、自分の魅力を活かしにきたー!って思いました。
村正は同じロングトーンの中で一度フッと音量を落とす→ぐーっと伸び上がるように音量・音圧上げるっていうとても特徴的な歌い方をしてるので、比べると違いが際立ちます。

あの日あのとき大事そうに抱えてたのは
ただのlies

ここ!!ここがやばい!!
抱えてた、のは……で弱く呟く→(タンッ)でぐわっと豹変するときの表情が!!ライティングが!!!神!!!!!!!
そして怒りを込めて唸るような「ただのlies」!!!!!

千秋楽前の公演では、こんなに激しくなかったんですよ…!再演みほとせ千秋楽のあの音が欲しかったのに、物足りない気分でいたからよく覚えてます。
デュエットパートナーであるつるむくんへの、(飛ばしてくぞ、ついてこいよ!!)って合図に聴こえて、ウオオーーーって心が湧いてからの…!!

誰かを信じれば何かを疑う でも

この加減のない声!!!!
両者が腹の底から出せる音を出してる、バチバチの歌唱バトルがかっこいい…!!!

明日へとつながる
ことばも この手さえも

ものすごく滑らかな同音色のパス!!!!
ちゃんと「会話」が成立してる…!

やっと作りだせる 自分なりの一歩は
どんなに険しくても 前を向かす 

やっと作り"だ"せる、の蜻蛉さんのシャウトがめちゃくちゃ力入ってて凄い迫力なんですが。
かたや後半歌いつつ、ニッと笑う鶴さんの胆力がおそろしい…!
配信聴きながらのメモに「ここで笑うのかよ!!!!!!!この音を聞いてここで!!!!!!」って書いてあって、自分の爆散ぶりがまざまざ思い出されます。

(間奏)

ここのダンスかっこよかったー!
蜻蛉さん、みほとせ再演までは衣装も振付も貫禄・重々しさが重視されてたように思うんですよ。
でも歌合でのこのダンスは、葵咲本紀で一気に足元をすっきりさせて機敏さ・激しさを出してきた、あのバージョンの振付でしたよね…。
触れては離れ、その間に何度もImpulseの走るようだった村正との振り付けに対して、鶴さんとの一回きりパンッ!と弾ける遠隔ハイタッチも熱い。

もどかしくて
でも物足りなくて…

ほんの短いフレーズなのに、ここの情報量も濃い…。
「もどかしくて」で強く、朗々と、一度しっかり声を張ってから
「足りなく」で、まさしくもどかしさ、苛立ちを表すように濁らせたと思ったら、
「て…」は途方にくれて、分からない、足りない、どうしたらいいんだ…って途方に暮れたような茫洋とした声を出す。
それを受けての…

またさがして いるんだ

"た"の高音当てるの難しいでしょうに、領分外の音域でも獲りに行く鶴さんがかっこいい!
そして「いるんだ」のほんっとに一瞬のソフトビブラートが良い……。
村正はもっと握りしめるように芯強く歌ってキンッ!て納刀するかのように切り上げてたのに対して、鶴さんは肌に触れた牡丹雪が儚く溶けるみたいにふわっとミュートかけるんですよ。
対比が最高。
テンション持続したままだったら胸に落として歌い上げたくなるだろうラストを、口蓋にフワッとまとめて、でも全く硬い音にならない完璧な塩梅。
あれだけ先輩へのリスペクトを公言して、真似ようと思えば真似られる姿も見せながら、先輩と全然違う歌い方を選ぶつるむくんの器が底知れない。

タンッ!で雪みたいなモニター背景に俯く、伏せたまつげの美しさが真剣必殺級ですし なんだもうやばい。

 

誰かを信じれば

ここは蜻蛉さんにはめずらしい「…dぁれかをしんじれば」みたいな曖昧な入り方でしたね。
誰かを信じたことで、疑い傷つくやるせなさが胸に迫る。
泣きそうな声、脱力した腕…。勿論作ってる声ですが、表現の豊かさにドキッとさせられます。

なにかを疑う でも…

そして鶴さんも切なげな顔で受ける。
高音の強すぎず弱すぎない絶妙な柔らかさが「分かるよ」って傍らにそっと寄り添うようで…10も年上の先輩とのデュエットで、よくこんな声を…。

 

明日へとつながる

ことばもこの手さえも

蜻蛉さんの「つぅな」に一瞬混じる高音ファルセットは、村正がスピード感出していくときの十八番の歌い方。
ギターのフレットを押さえる左手の指がキュコッ!て擦れる、あの感じなんですよね。
そして鶴さんが「さえも」をグッと力強く唸る!

やっとつくりだせる 自分なりの一歩は
どんなに険しくても 前を向かす

噛みつくような強い声を出しながら挑むように鶴さんを睨む蜻蛉さんに、負けじとワイルドにがなる鶴さん。
二振で呼応しながらボルテージをぐわーーっとあげた上で…!!

立ち止まりかけても 悔しがり続けても
貫くときがくる

もうここからは一気呵成!!!!!!!
蜻蛉さんのシャウトが熱すぎる上に、「来る」に今までやってなかったトリルが入ってる…!
「歌唱力プロレス」こと向かい合って声をぶつけあう村正派のやばい歌い方、再現して盛り上げるって選択肢も絶対あったと思うんですけど、それをやらないでくれた演出ありがとう…!!!!!!
外側だけ真似たって意味がないんだよ、そういうことじゃねえんだよ、って言ってくれてるようで胸いっぱいでした…。

 

朽ちかけのプライドじゃなく

スピード感MAXのクライマックス、ここで感情のダム決壊ですよ。
「プライド」のプ、最後の、最高の、村正の真骨頂だった1音だけがちゃんと出ないんですよね…!!(;;)

(7/24追記:円盤確認したところ、修正が入ってちゃんと綺麗な音になってました。ここで言及してるのはDMMアーカイブ配信ver.で見られるものということでお願いします)

もしかしたら出せた公演もあったのかもしれない。
ただ少なくとも私の観劇した公演では、北海道、さいたま、愛知、千秋楽、ぜんぶ音割っちゃってるんですよ。

これねーーー、ここまでに輪をかけて勝手な妄想だと思って頂きたいんですが(強調)
ただ正確な音を出すだけなら、つるむくんは出せたと思うんです。
音符で言うなら”真ん中のラ”、葵咲本紀の2部ソロ曲の中にも含まれてる音程なので…。
前後含めて歌い方調節して、ファルセット使って美しく歌い上げる安全運転も多分できた。
それでも、太田さんの村正が鳴らして魅せた鋭いハイトーンがこのライブパフォーマンスには欠かせないって判断したから、敢えてフルアクセルのミックスボイス狙って突っ込んだと思うんですよね。

私はこれを「不出来なものを出された」とは感じません。

想像上の”正しい音をしっかり置きに行った歌唱”よりも、”いちかばちか渾身の音で挑んでギリギリ届かなかった歌唱”の方が、残酷ですがカバー曲のコンテクストとして断然魅力的なので…。
よりにもよって「プライド」の最高到達点だけが出ないって、もう、もう、本当に物語のよう。
出したかっただろうなあ、悔しいだろうなぁ、こんなに上手くても21歳の喉なんだよな…ってなってしまって、忘れられそうにないワンフレーズです。

僕にできる可能性という新たな道は
どんなに険しくても 明日をつくる

唸り声も最高潮にして絶好調の蜻蛉さんに、「どぉんなに」の美しさと「わ」のインパクトが大正解の鶴さん。
このタイミングで鶴さんに”どんなに険しくても 明日をつくる”を歌わせる歌詞振りが響きすぎる。

これから進むすべて
遮るもの すべて
すべて
すべて…

父のように強い目と優しい笑顔で「見ているからな」って手振りするすぴんぼさんと、一瞬眉を下げた笑顔になってきゅっと目を細めるつるむくん。
言葉がないです。
計算して出せるものではない、ほんの瞬く間の感情の交錯。
茅野さんの言葉を借りるなら「演劇は見るものでなく目撃するもの」を肌身に覚えて、鳥肌が止まらなかったです。


「「That's all I haーーー→ーー↑ve」」

そしてこれまで村正ファミリーの専売特許だった、滑らかに音程を上げるユニゾンをぴったり揃えたフィニッシュ。完璧。
・あのサイズの会場で
・ふわっとソフトな音色で
・目を合わせられない立ち位置で
・音量音圧も本公演以上に間を持たせて上げながら
っていう地味に厄介な部分も、もはや意識もさせないくらい危なげなくクリアしてくる安定感ですよ…。

技術がただ高いだけでも、ただ息が合ってるだけでもできない。
技と心の揃ったときにだけ魅せて貰える花を、最後の0.01秒まで堪能しました…。

 

やー…心情的には、もうこの曲でスタンディングオベーションです。凄まじい『歌合』を見てしまった……。
去年の小狐丸のVersus(祭)に続いて、Impulse(歌)として、心の殿堂入りになりました。

はーー、大変な分量になりましたが文章にしてすっきりした!!この後の歌は平常運転です!!笑

 

★★★

 

Stay with me

(再演・三百年の子守唄)

村正に代わって巴さんセンター!
もう持ち歌のような違和感ゼロっぷりでしたねw 凄い。
わざわざ一瞬だけコートで登場してすぐ脱いでくれるみほとせオマージュ演出、超嬉しかったですありがとうございます!!

センステ丸さんはターンも帝王座りも完璧に美しいし、いまつるちゃんの \ブレイキナーーー↑ウ!/ は可愛すぎるし、「この距離を 壊すのは なにげない台詞じゃーなァーい!」でギュイーン!!ってエレキギターみたいな音色鳴らす小狐さんはイケ狐にもほどがあったよ…!!
歌唱力モンスター蜻蛉さんのパートに、衝力マシマシの小狐さんが入る采配は熱すぎる!!!
あの本丸の三条も、大概エンタメの鬼になりつつありますね…。

「迷宮入りのFantasy...」で、ほんの少し乱れた髪が目元にかかる流し目丸さんとか、なにそれヘアメイクさんにやってもらいました…?ってびびりましたもん。美の女神が微笑んでペンラ振ってる。

 

あと美といえば蜂須賀ー!
「ずっと足りなぁい きっと満たされなぁ~~~い」の声色良かったー!!
しっかり硬口蓋に響いて鳴ってましたね、出してて気持ちよかっただろうなぁ…!
本公演では青江がエスコートされてた場面、

 青江:ワオ☆ってほっぺに手当てるコケティッシュな仕草
 蜂須賀:にっこり微笑んでさしのべた手を取らせる

っていうこの!このエレガンスの出し方ずるい!
…と思った矢先にあのあっかんべーですよ。
もうほんとミュ蜂須賀、主を喜ばせるのが大好きな、愛されいたずら個体っぷりが年々磨かれていく…。たいへんなことだ…。

 

あと去年に引き続き距離感おかしい巴さんと丸さん事件ねw 艶っぽいのに可愛いナンデ!!
バリエーション出しながらあの画面作るのが楽しそうだったからですかね…特に巴さんが…。
素のふわふわのんびり/儀式のときの清廉な品格/2部ライブのキレッキレの色香、ミュ本丸の祭礼刀3段活用かんべんしてください。
ここの絡みがもっと見たいです審神者P…。

あとチームに安定がいると、ハケまで小ネタたっぷりになるのも定番になってきましたねw
「主と、Stay with me♡」\\きゃぁん♡//じゃないんだわ!可愛いこんにゃろう!笑

 

にっかり青江篝火講談

(脚本:赤澤ムック )


なつむしの みをいたづらに なすことも ひとつおもひに よりてなりけり
古今集:夏虫が火に飛び込んで死ぬことも、私があなたへの思いで身をほろぼすのも、同じ思いの火によるものなのです/作者不明/巻11 544)


ライブナンバーで盛り上がった場に、シン…と冷えた風が吹きこむような場面の転換。
雨月物語の『菊花の約』を怪談×講談調の一人芝居で語るっていう、この歌合でも異色のパートでしたね。

…だって僕は、君につよく握られたり、撫でられたりはしても、結果、斬ることしかできない。
鍔競りの痛み、押し込む圧、刃毀れさせる興奮はあっても、交わるとはどういう感触なのか、知ることができないからね。

原作の冒頭を引用してから「交わり」を語る、このにっかり節パートたまらない!!
ここまで情緒的かつセンシュアル……ある種耽美な台詞って、御笠ノ先生の筆からはたぶん生まれないものだと思うんですよ。
メッチャ乱暴に言うなら、通常運転の刀ミュが司馬遼太郎、こっちは谷崎潤一郎
こんぺいとうとまた別口で、外部脚本を加えたからできた作品だったなぁと思います。

ていうか何かもう、あらゆるものが凄すぎた…!!


テーマ設定の絶妙さ
まず企画の時点でやばい。
恋歌と義兄弟の契り(暗に衆道関係)の物語を絡めて語るっていう、ちょっと大人な趣向のインパクトも、「まあにっかりさんだし…怪談でもあるし…」でスッと入ってしまう感じとか。
相思う二人の信義の話でありつつ、霊魂の千里行、武士としての忠義、親子の情、重陽節句九月九日九十九話目までの百物語……
原作のエッセンスと、ミュ本丸のにっかり青江のマッチングに圧倒されたりとか!

しかも出身の備中国や元主・京極家の係累にもゆかり深い、尼子家・塩冶家の絡む話ですしね…。 
これもまた、何をどこまで計算して決めたの案件ですよ。こわい。
 
ビジュアル得点の高さ
青白い人魂を背後に遊ばせながら歌う青江、まじで反則の映像でしたよね!!?
形式としては一人芝居ですが、(人魂に限らず)音響照明映像が半ば助演のように寄り添って、講談師としてのにっかりさん、立ち現れる黒い影、夜空を渡る風…各所の表現を深くしてくれてた。
天井いっぱいに咲く白菊の輪舞、くらくらするほど美しかったなあ…。

 

にっかり荒江さんの空間支配力
何よりこれね!!!!!
いやもう、正直アイディアの時点で正気の沙汰ではない
ただでさえお芝居は大変だって言ってたアリーナクラスの会場で、ほとんどの時間は上半身のみの演技で、まさかの1万人vs1人ですよ。忠勝単騎駆けですかよ。
いくらキャラクターや過去公演の力もあるとはいえ…。
本職の講談師の方だってそうそうやりたくないだろう状況で、空気を散らすことなく自分の語りに惹きこんでみせたあの技量と度胸。
「ばけものだ…!!」って思いました、ストレートに。

 

特に人魂とのくだりが好きで好きで…。
「…おやおや、おでましだねえ」から現れた人魂達って、劇中の言葉を借りるなら”幼いほど純粋な欲望”が形を成した炎なんですよね。
もはや妄想なんですけど「綺麗な景色だよ…」はまるで人魂を手懐ける言霊みたいだと思ったし、「単純で、幼く、愚かで…!!」とともに打ち付ける張扇は、暴れださないように躾ける鞭みたいだった。
千秋楽では「ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ」ってうっそりした声色でしたが、印でも切るように「ひ!ふ!み!よ!」って数えてたバージョンも、めちゃくちゃかっこよくて好きでした…。

肝心の講談もすごかった。
これで全体を本格的な講談に寄せてきてたら、またちょっと印象も違ったと思うんですが。

-義兄の宗右衛門は、まさに講談、神田松之丞さんあたりを思わせるざらついた声と重めの芝居。
-義弟の左門はすこし若々しく、自然な青年の語り口。
-そしてにっかり青江独演パートは、キャラクター性全開でひんやり・しっとり・ねっとりした喋り方。 

結果として、講談をリスペクトしつつも”講談そのもの”にはならない、「にっかり青江による講談調の一人芝居」になってたと思うんです。
「魂ならば、千里の道をも越えられる…!!」の凄絶な表情から、スゥッとにっかりの顔になるところは息を呑みました…。
あれを真正面ドアップで抜く→「約束を果たしきたんだ。自害をして、風に乗ってね…」で天上を仰ぐカメラの切り替えも、ライティングの変化も完璧。拍手。

 


『菊花輪舞』大好きだ…!!!!!!
今までにっかりさんの高音といえば、もっとカンと張った硬質な印象だったんですよ。叩いたらぱりんと割れる琥珀糖みたいな。
でも今回は、まるでバイオリン独奏みたいな柔らかく澄んだ音で…。
あくまでモノの視点から「僕は交わる心地を知ることができない」って語る声と裏腹、透き通った血が肌の下にうっすら透けるような奏で方に聞こえたんです。
奇しくも”心金の透ける青江刀の澄肌”ともイメージがリンクしたりして、ゾクゾクが止まらなかった。

しかもこの曲も3拍子。
青江ファンとしては、思い出すのは本丸の近侍曲ですよね…!!
『懐かしき音』の項でも語りましたが「ワルツは一人じゃ踊れない」。(輪舞のベーシックな和訳はロンドですが…笑)
こういう風に叙情的に綴ると、義兄弟が思い合う心の切なさ⇔女幽霊に添う青江の危うさ美しさ、ストーリーの要素が響き合って引き立って、もう、もう…。
青江のアリアとでも呼びたいような、キャラクター表現の詰まった曲に仕上がってたなと思いました。

 

…そんな青江色に染まった世界から、「お名残惜しゅうはございますが!」の一声でスパン!って元の空気に戻してくれるアフターケアまで完璧!笑
ミュ本丸のにっかりさん、本当にデキる大脇差ですよ…。
「うっかりしゃべりすぎた、ようだね」
の流し目がめちゃくちゃ艶っぽくて大好き、原作青江のちょっとトロンと瞼重そうな感じ出てて最高です。

歌のラスボスがすぴんぼさんなら、芝居のラスボスはにっかり荒江さん。
貫禄の一幕を堪能しました。


これは余談。
席の関係でたまたま見えたんですけどね。毎回この話が始まる前、カメラが中央通路をゴロゴロゴロ!って移動して、すごい速さでセッティングされてたんですよ。
パンフの茅野さんが「お芝居には、ある程度役者の息遣いとか目線とか、そういったものを肉眼で見て感じられる距離感というものが必要だと思っています」と仰ってましたが、
その部分を補ってくれたのが、会場を満たしてくれた音響であり、照明効果であり、計算された構図で役者さんが映し出されるライブカメラでしたよね。

再度になりますが、広大な会場での一人芝居を成立させるための、各セクションのフルサポートに心から敬意を表します…。
素晴らしい小編を有難うございました。

 

 

梅 the way

(脚本:川尻恵太)


うめのはな おりてかざせる もろひとは けふのあひだは たのしくあるべし
万葉集梅の花を折って髪に挿している人々は、今日のあいだは楽しいことでしょう/神司荒氏稲布/巻5 832)


のどかな春の日にざぶとんを見つけた明石が「戯れにしゃべくりでも~」と語りだす、にっかり講談と対になるような落語調の小話。
…なんですが、その内容は

「主の大切な梅の枝を折ってしまった今剣と小狐丸。動揺した二振は明石の口車に乗せられるまま、木があったという事実を丸ごとなかったことにするために、鋸で切り倒してしまう。
 しかし実は、最初に枝を折ってしまったのは明石自身。それをごまかすために、小狐丸と今剣をまんまと利用したのでした。
 ──ま、ぜんぶ作り話なんですけどね★」

という、ちょっとスパイスの効いたお話でした。
こちらは元ネタの無い創作噺だと思われます。

 

これもまた刀ミュには珍しく、男士の行動でヒヤヒヤ・ハラハラさせる類のストーリー。
そのまま受け取るにはちょっと明石がアレなので(笑
「梅の木は歴史の暗喩で、枝を折る=改変された歴史を剪定すること。
 では、『バランス悪うなってしまいましたなぁ』と次々に枝を折り、折らせ、最後には『こんな梅の木はなかった』でどないです、と唆す明石の真意は…?」
なんて読み方も出てましたね。


個人的には本当に、読みたいように読んでいい話だと思います。
いつもの刀ミュみたいに「つまり何が言いたいのか」を明示する台詞もないし、「ココが堀りどころだよ~」ってアピールするキーワードも、多分提示されてない。
(途中の公演までいまつるちゃんが「歴史の修正を阻止する僕たちが、こんなことしていいんでしょうか…?」みたいなこと言ってたって話もありますが、「敢えて削ったなら削った意義を尊重する」主義なので、一旦知らんぷりということで!笑)

和歌とも合わせて、明るさや深さを何通りにも読み解くことができる。
彼の本心=真実がどこにあるかは掴めない、が公式設定の明石っぽいお話だなあと…(笑
脚本の川尻先生も「皆様なりの解釈で楽しんでいただければ」とツイートされてましたしね。


ちなみに歴史修正云々以外で私自身の受け取ったのは、一言で言って「これも心やん?」でした。
神遊びで『本性、欲望』っていう、ミュ本丸の良い子たちから出てくるにはぎょっとするような、強い言葉で綴られてた部分。

明石も言ってましたが、本来の落語でも”ちょっとした失敗・見栄・出来心を何とか取り繕おうとして、どんどん事態がえらいこっちゃになっていく”っていうお話はド定番。
なぜかっていえば、それって誰しも少しは身に覚えのあるような、とても身近な心の動きだからだと思うんですね。
大げさな滑稽譚として笑わせつつ、そういう腹の中の薄暗い部分をコショッとくすぐって来るのも落語の醍醐味だよねと。

 

ひるがえって今回のお話。
直前の短編を担当した青江は、約束ひとつ守るために命をも擲つ交わりを「羨ましくもある」と語った。
いまつるちゃんも小狐さんも。本来は正直で誠実で、自分の失敗を主にちゃんと告白できるタイプ。
いやぁ素晴らしいこっちゃ。

By the way(それはそれとして)、誰でもうっかりすることあるし、つい保身を考えるし、ずるい気持ちが湧いたり、悪魔のささやきに丸め込まれてまうこともありますやん?
そうそうお綺麗に、完璧に行かへんモノちゃいますのん。それが取返しつかんとこまで行ってしまうことも、まぁありますやろ。
…みたいな形で”心”の在り方に触れたお話だったのかなぁ、みたいな。
葵咲本紀で篭手切&御手杵相手に「真面目すぎは疲れますやろ、失敗は失敗や。まあ気楽にやりましょ」って失態をアッサリ肯定・許容することで空気をほどいて見せた、あの明石のイメージ補正も入ってると思いますが…(笑
(♪そりゃありますやろ誰にでも、秘密の一つや二つ、三つや四つ、五つや六つ、七つや”八つ”…)

仮に梅を歴史になぞらえると、「なぁに自分は誰にも言いまへん。善意でやったことや、咎められることあらしまへん。大丈夫、ええんやで」って丸め込まれてく様は恐ろしくもありますが。
By the way(それはおいといて)梅は綺麗やし。まぁさしあたり今日のところは、みなさんと楽しくやっときましょか。今日は、ね。
っていう、ちょっとアイロニカルな胎教を新男士に施す明石先輩(仮)…。


そんなこんなで審神者心をさんざん乱したあとで、
「…とまぁ、こういうタネがあった訳ですな(梅だけに)」
「ほんとは誰かと話に花を咲かせるのが一番なんですけどねぇ」
っていうオチで、ちゃんと綺麗にまとめるちゃっかり感まで\こんにゃろ!!/って感じの明石国行でした(笑

ばいざうぇい、内番姿で仲間に挨拶するときもいつもの優雅なお辞儀のいまつるちゃん最高でしたね!!?
ミュ三条のーーこういうところがーーーだいすきだーーーーー!!!


余談。
ちなみにこの話を初めて見たとき、なんとなく連想したのが「頭山」っていう落語でした。
ケチな男がさくらんぼを種ごと食べたら頭から桜が生えちゃった。
花見客がうるさくてしょうがないから引っこ抜いたら池ができちゃった。
ボウフラが湧いて魚が来て釣り船が出て、もうどうにもこうにもノイローゼになってしまって、ついには自分の頭の池に身を投げてしまったとさ!
っていう、ちょっとブラックなナンセンスオチのやつ。
別に関西弁=お笑いっていう安直な話ではなく(笑)、落語のこういうところと明石、言われてみれば相性良いですよねえ…。
http://rakugoarasuji.jugem.jp/?eid=10

 

Brand new sky

(結びの響、始まりの音)

 

(」;□;)」<聞きたかったーーーうれしかったーーーーー!!!!!
去年のSecret Signに続くの、てっきりこれだと思ってたから!!
Heart to Heartも嬉しかったけど、もう一回むすはじメンバーで聞けたらどんなに素敵だろうと…!!うわーん!!

「大切な仲間ができた!」でいちれつに並ばないでください!
うそ、もっとやってください!!なかよしむすはじ!!

「大切なことは信じること」のところの兼さんの表情の作り方めっちゃ好きです…。
「信じる」の一瞬で(>_<)ってお顔になりながら信じる!って身振りするの可愛すぎる。
ほんとにこの曲、歌ってるむすはじ組も楽しそうだし曲調もパワフルで明るいしダンスは元気良いし、問答無用で笑顔になってしまう。
まっさおな空にむかってウーン!って伸びするみたいな気持ち良い曲ですよね。

しかし間奏、フラッグまではまだ分かるとして、巴さんのリボン is 何!!?w
どう考えても必然性の無いぶっとび演出なんですけど、ご本刃めちゃめちゃ笑顔だし普通に見とれるし、なんかもう楽しいから花丸です!!ってなるからパフォーマンスの力すごい。
こんぺいとうの出席率といいこれといい、クオリティで \押し通ーーーーす!!/ してくるむすはじ組のポテンシャルよ…。

未来の希望に満ちた歌を、第二章開幕を控えたこの時期に聞けたのも最高でした。
いやー楽しかった…。

 

Nameless Fighter


(初演・三百年の子守唄)

 

2017年乱舞祭に引き続き、まさかの2度目!!
年末ライブで同曲デュエットを同じ男士でやったの、前例ないですよね!?

この曲の冒頭、ちょっと早口言葉みたいで歌うの難しそうだなと思うんですが、今年のにっかりさんの歌い方がめちゃくちゃ好みで…。
「クールダウン」の、淡々としてるようで何か秘めるものがある感じすごい好き。

そして伽羅ちゃん!!
朗々とした奏で方、サビの高音で使われるファルセット、ちょっと癖のあるダンスを決めるための体の使い方、しっかり手綱とっててかっこよかったー!!
しっかり振り付けも初演ver.踏襲してる中で、 Breaking down! だけキックからパンチになってたのが印象的でした。
手首が細いのにかよわい感じは一切ない、研ぎ澄ましたような牧伽羅ちゃんの腕と拳良いよねえ…。

 

そしてね、『Impulse』『Nameless Fighter』でうっすら感じて、後の『獣』で確信に変わったんですが。
今年の歌合の大きなチャレンジとして、意図的に「聖域」の壁を崩しにきたなと思ったんですよ。

 

もうオブラートに包まず書いちゃいますが、『Impulse』は今回登場してない村正が、『Nameless Fighter』『獣』ソロパートは旧キャスト・財木くんの大倶利伽羅が歌った人気曲でしたよね。
そして刀ミュの歌…特に2部曲は、当時のチーム・キャストの個性を最大限に活かすような形で作られてる。
ファン心理としては、どうしたって複雑なところです。
それは歌った伊達二振も、セトリ組んだ運営の方達もよーーく分かってるはず。
特につるむくんは、自分自身が村正派のファンだから気持ちが分かる、って話してくれてましたし…。

じゃあ何で、わざわざそんな采配をしたのか。
「『この歌は●●だけの持ち曲』をやめるため」だと思うんです。

現実問題、キャストの皆さんに永続的に刀ミュに出て貰うことはできない。1年後には誰がどうなってるか全然分からないのが演劇です。
そうして欠員が出た時に、相方がいないから、メンツが足りないから、キャスト変更があったから……そういう理由で「今年は歌えない曲」「二度と歌えない曲」「『お前の歌じゃない!』を気にしながら歌う曲」が増えていくのは、すごく、すごくもったいないことだと思うんですね。
作られた歌も思い出も、素晴らしい財産なのに。

その暗黙のタブーめいた空気を、あえて最大の大舞台で、はっきり打ち消しに行ったように感じました。
メンバー補充やシャッフルユニットでも徐々にその境目は薄まっていたけれど、まだ弱い。
かつて”誰か専用”だった位置に自分が立って、先行者をすごくリスペクトした上で自分なりに歌い継ぐ気概を見せてくれたからこそ、その覚悟がガツン!!と刺さったんだと思います。

「この男士の曲、このチームの曲」として一度歌った後は、新しい魅力を模索しながら「本丸全体で受け継いで行く曲」へ。
移り変わるけど、以前のものが失われたり忘れられる訳ではない。
ミュージカル刀剣乱舞が10年、20年、ずっと続いていくコンテンツを目指すための、その重い嚆矢を、新世代を担う二振が派手に放ってくれた一幕だったんじゃないかな…と、ミュ本丸だいすきおばけは勝手に思った訳です。勝手にね!!笑

今思い返せば、加州単騎のJackal⇔2018村正&青江の解けない魔法っていう持ち曲交換がすごく魅力的に仕上がってたのも、気持ち的な受け入れを後押ししてくれたのかもしれないですね。
「本丸」が各部隊の寄せ集めじゃなく、ひとつの輪として豊かに広がっていく…。感慨無量です。

 

約束の空

(葵咲本紀)

 

篭手くんの「これがラストです!!盛り上がれェ!!」熱かったー!!
千秋楽のすていじでぶちあがる篭手切くん、どまんなか解釈一致です!!!笑

この曲をBrand new ”sky”と並べてくるのずるいよねえ…!
晴れやかアイドルソングなんだけど、どこかコーラスアンサンブルも思わせるような鮮やかな彩りの曲。素敵な取り合わせで採用されて嬉しかったー!
各所のハモりが大好きです…。ほんっと聞いてて気持ち良い…。
ちなみに空繋がりで、ネームレスファイターもさりげなく「サタンが導く空」出てましたね。
こんなところで3年越しのパライソ回収されるとか思わなかったよ!!笑


あとこの曲の男士配置もニヤけるほどに好きです。
村正パートは堀川くん、空に突き抜けるように華やかに通る声がすっごい合う!この曲も絶対相性良いと思ったんだ~!
「でもこの手は明日へと伸びてゆく~」の蜻蛉さんパートに至っては、まさかの担当物吉くん!熱すぎる!!

 

それから間奏部分の二列横隊ダンス、葵咲本紀では蜻蛉さんがやってた震源地ポジションを杵くんが…!!
ゲームの「(極修行中に武功を積めないとしても)せめて蜻蛉切には負けられん」が大好きなので、あの貫禄のセンターを引き継いで見せつけてくれたの最高でした。

確かさいたまだったと思うんですけど、Cメロの「瞬きもせずーーーuhーーーーー」をアップで抜かれるとこで、鶴さんがやっばいウインクぶちかましてたんですよ。
よくあるパチーン☆じゃなくて、丸1秒くらいでゆーっくり閉じて開く、すごいしっとり感のやつ…。
見た瞬間、2018祭『In my light』三日月の「(消せない 消せない 消せない)ひーかーりーがーー♪」のやっっばいウインク思い出して、つるむくんはまりちかさまの系譜…?!って慄いたので、忘れないように書き留めておきます(笑

 

この曲のラスト「「「I never forgetーーーーーー♪」」」のハーモニー、どこか天上の音楽っぽい金管ファンファーレを感じてたまらんです。
みほとせ再演では村正派のハイトーンがその光溢れる感じをリードしてくれてた訳だけど、そのどちらもいない状態でも同じ種類の…なんだろ、「声で作る光の梯子」みたいなものを感じられたのがすごく幸福でした。
広い会場で聴くのすっごい気持ちよかったなー!!

 

 

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さすがに1記事が長くなりすぎたので分けました…(笑

後半に続きます。

 

 

https://musical-toukenranbu.jp/pages/utaawase_ranbukyouran
M1『奉踊(ほうよう)』
作曲:和田俊輔 編曲:和田俊輔、YOSHIZUMI 振付:DAZZLE 

M2『神遊び』
作詞:浅井さやか 作曲・編曲:和田俊輔 振付:桜木涼介 

 

【懐かしき音】
脚本:浅井さやか

M3『懐かしき音』
作詞:浅井さやか 作曲・編曲:YOSHIZUMI 振付:桜木涼介

M4『懐かしき音rep.』
作詞:浅井さやか 作曲・編曲:YOSHIZUMI 振付:桜木涼介 

M5『お百度祷歌』
作詞:浅井さやか 作曲・編曲:YOSHIZUMI 振付:桜木涼介

 

【根兵糖合戦】
脚本:畑 雅文

M6『CONFEITO』
作詞:畑 雅文 作曲・編曲:オレノグラフィティ 振付:桜木涼介 

 

M7『mistake』
作詞・作曲:多田慎也 TAKAROT 編曲:TAKAROT Stage Arrangement:YOSHIZUMI 振付:本山新之助 
  M8『Impulse』
作詞:Kenji Kabashima(Wee's inc.) 作曲:Kenji Kabashima(Wee's inc.) Sugaya Bros.(Wee's inc.) 編曲:Sugaya Bros.(Wee's inc.) Stage Arrangement : YOSHIZUMI 振付:本山新之助 

M9『Stay with me』
作詞:miyakei 作曲:大智 児山啓介 編曲:児山啓介 振付:本山新之助 

 

【にっかり青江 篝火講談~夏虫の戯れ~】
脚本:赤澤ムック

M10『にっかり講談~始~』
作詞:浅井さやか 作曲・編曲:YOSHIZUMI 振付:DAZZLE 

M11『菊花輪舞』
作詞:浅井さやか 作曲・編曲:坂部 剛 振付:DAZZLE 

M12『にっかり講談~終~』
作詞:浅井さやか 作曲・編曲:YOSHIZUMI 振付:DAZZLE 

 

【梅 the Way】
脚本:川尻恵太

M13『Brand New Sky』
作詞:前迫潤哉(Wee's inc.) 作曲:前迫潤哉(Wee's inc.) ツカダタカシゲ(Wee's inc.) 編曲:ツカダタカシゲ(Wee's inc.)  Stage Arrangement : YOSHIZUMI  振付:本山新之助 

M14『Nameless Fighter』
作詞:ENSHU(Wee's inc.) 作曲:ツカダタカシゲ(Wee's inc.) ENSHU(Wee's inc.) 編曲:ツカダタカシゲ(Wee's inc.) 振付:本山新之助 

M15『約束の空』
作詞:miyakei 作曲:大智 原田峻輔 編曲:原田峻輔 Stage Arrangement : YOSHIZUMI 振付:本山新之助

 

*1:spoon 2Di Actors Vol.9